業務の優先度に応じた可用性向上策を

それでは、実際に仮想化環境での可用性を高めるためには、どのような点に留意すればいいのだろうか。これについて、サイオステクノロジーのセールスコンサルティング部 担当部長、石崎次郎氏は次のようにアドバイスする。

サイオステクノロジー セールスコンサルティング部 担当部長 石崎次郎氏

「仮想化システムを業務レベルで適用できるようにするためには、3つの視点で可用性を検討する必要があります。まずは物理サーバーの可用性。次に仮想化マシンの可用性。そしてもう1つが、アプリケーションレベルの可用性です。業務要件と照らし合わせながら、この3つの視点を考慮してシステムを設計しなければなりません。」

これらのうち、見落とされがちなのが、3つ目のアプリケーションの可用性だ。例えば、システムの運用においては、仮想マシンは正常に稼働していても、データベースだけが止まるといったケースも考えられる。これは仮想化ソフトウェアに備わるHA機能だけでは認識できない。仮想化環境の管理ソフトウェア上は正常に稼働しているように見えても、実際はサービスが停止状態にあるということも考えられるわけだ。

運用管理を担当した経験のある方ならおわかりだと思うが、アプリケーションのみが停止するという状況は決して珍しいものではない。「調査会社の発表では、計画外システム停止の原因の約8割がアプリケーション異常やシステム操作上の問題に起因する、というデータもある」(石崎氏) という。

では、LifeKeeperではどのようにしてアプリケーションの異常を察知しているのかだろうか。この点を問うと、石崎氏は次のように答える。

「アプリケーションによって"異常"の定義、監視方法は異なるため、LifeKeeperではアプリケーションごとに専用の"オプション製品"を用意し、そこに動作状況の判定処理を実装しています。単に問い合わせが返ってこない状況を異常とみなすケースや、問い合わせの内容を解析して想定外の値が入っていた場合に異常と判定するケースなどに対応し、実装しています。」

この判定処理の結果、異常と認識された場合には、業務要件に応じて継続処理を実行することになる。経費精算システムのようにそこまで急を要さないものに関してはアプリケーションの再起動を実施し、数分の停止も許されないものに関しては即座に待機系サーバーで処理を引き継ぐ(フェイルオーバー)ことで可用性を確保するといった構成を組むことが可能だ。

「仮想化ソフトウェアの可用性向上機能とHAクラスターソフトでは監視できる範囲が異なることをぜひ理解して欲しいと思っています。すべての業務システムをHAクラスター化する必要はありません。しかし、止めてはいけないミッションクリティカルなシステムについてはHAクラスターソフトと組み合わせて高可用性を確保できるようにすることが重要です。また、HAクラスターソフトはただ導入すれば良いというものではなく、運用手順の定義を最初にしっかりと設計することも大切です。障害発生時には、どの程度まで原因を確認し、どのような場合に再起動やフェイルオーバーを施すのかを慎重に考えて構成する必要があるでしょう」と石崎氏はアドバイスする。

LifeKeeperのHA機能の概要

さまざまなシステム構成を採用できる

また、通常のLifeKeeperは稼働系と待機系の2台の物理サーバーを必要とするが、サイオステクノロジーでは、VMware向けのソリューションとして、待機系サーバーを用意せずに済む「vAppKeeper」も今年2月に提供を開始している。こちらはアプリケーション異常時に仮想サーバー単独でアプリケーションの復旧を試み、復旧できない場合はvSphereHAと連携してほかの仮想サーバーへフェイルオーバーさせることが可能である。HAクラスタ化するほど高い可用性は必要ないが業務システムとして可用性を担保したいシステム向けの製品である。用途に合わせて、検討したい製品の1つだ。

「vAppKeeper」リリースキャンペーン実施中

サイオステクノロジーでは、8月31日までの期間限定で「vAppKeeper」のリリースキャンペーンを実施している。iPad 32GB Wifiモデルや3000円相当の景品が先着順にもらえる特別施策を展開しているので、興味のある方は一度キャンペーンサイトをご覧になるとよいだろう。

HA領域でのクラウドサービスとの連携を強化

現在、サイオステクノロジーでは、クラウドサービスとの連携の強化に注力しているという。その一環として昨年6月に、日本IBMとクラウド分野での協業を発表し、同社の企業向けパブリッククラウドサービス「IBM SmarterCloud Enterprise」とLifeKeeperを組み合わせた事業継続ソリューションの提供を開始している。

このソリューションは、災害時に自社のITシステムからクラウド上のバックアップシステムに切り替えることができるサービス。少ない初期投資と短い構築期間で事業継続を支援するソリューションとして主に中堅企業で活用されている。

また一方で、クラウドサービスそのものの可用性を向上する取り組みも、サイオステクノロジーは展開していく構えだ。一般にクラウドサービスのサービスレベルは、HAクラスターソフトで実現するサービスレベルほど高くはない。そこで、クラウドシステム上でもLifeKeeperを適用しやすい仕組みを導入し、ユーザーがオプションとして採用できるようにすることで、大幅なサービスレベルの向上を図ろうというのである。

また、仮想化における大きな課題の一つとして、サーバーは集約できてもディスクシステムのI/Oがボトルネックとなり十分なパフォーマンスを発揮できないというものがある。この点についても、サイオステクノロジーでは今年4月に超高速半導体ストレージとして注目を集めるFusion-io社の「ioDrive」に対応したLifeKeeperを発表するなど、先進的な取り組みを進めている。

最後に、今後のサイオスの方向性について、石崎氏に語ってもらった。

「これからは、より高いトランザクションでの処理性能が求められるような業務システムがLinuxそして仮想化環境に移行し、そこでHAソリューションが採用されるケースが増えてくると認識しています。我々としては、HAソリューションが採用されるミッションクリティカルな領域において企業の事業継続性を支援できるよう、今後さらなる努力を継続していきます」

IBM、CTC、サイオスがわかりやすく解説
「仮想化環境の高可用性システム構築セミナー」開催


本企画で取材した3社による「高可用性システム構築セミナー」が、東京、名古屋、大阪、福岡の4都市で開催される。システム基盤設計上の考慮点から、アプリケーションの実稼働を意識したソフトウェアの紹介、安価で信頼性の高いハードウェアの選び方など、3名の有識者からさまざまなノウハウが紹介される予定だ。

セミナーの詳細はこちらのWebサイトに掲載されているので、興味のある方はご確認いただきたい。

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