仮想化環境における高可用性システム需要の高まり
レガシーからオープンへ、さらにはUNIXからLinuxへという企業ITの潮流はますます加速している。コストメリットに優れるLinux上でミッションクリティカルな業務システムを稼働させることも、昨今では当然のこととして受け止められるようになってきた。
さらに、仮想化技術の普及もまた目を見張る勢いで拡大しており、中堅・中小企業において仮想サーバーを利用するというケースも多くなった。IDCジャパンの調査によれば、2016年には国内サーバー出荷台数の20.9%が仮想化対応サーバーになるという。同年の仮想化サーバー予測出荷額は1179億9400万円。x86サーバーが中心で以前よりも単価が下がっているにもかかわらず、1000億円を超える巨大な市場だ。
そしてまた、企業におけるシステム統合の流れの中で仮想化を前提とした統合IT基盤の構築もグローバルでのトレンドとなっている。企業グループの共通IT基盤としてプライベートクラウドを活用する事例も頻繁に耳にするようになったが、こちらも多くの場合が、仮想化が前提になっていることはいうまでもない。
サイオステクノロジー パートナー営業1部 築山春木氏 |
こうした状況の中、今、急速にニーズが高まっているのが、Linux/仮想化環境に対応した高可用性(HA : High Availability)システムだ。サイオステクノロジーにおいてHAクラスターソフト「LifeKeeper」を担当するパートナー営業1部の築山春木氏は、最近の市場の変化について次のように語る。
「従来、当社のHAソリューションの顧客には、情報通信業やWebサービス業が比較的多かったのですが、この2、3年で製造業や流通サービス業、金融業の顧客も増えました。エンタープライズ領域でも確実にLinuxそして仮想化環境におけるHAクラスターソフトの需要が高まっているのを実感しています。」
サイオステクノロジーは、LinuxやJavaといったオープンソースソフトウェア(OSS)を中核とした高い技術力と開発力を有する企業だ。日本、米国、英国、中国に拠点を構え、グローバルにビジネスを展開している。ITシステムの開発/基盤構築/運用サポートほか、 ソフトウェア販売やクラウド事業なども手掛けており、そのソリューションは年間500社以上の企業に採用されている。
同社が提供するさまざまなソフトウェアの中でも主力製品として事業を牽引しているのが、2006年に買収した旧SteelEye Technology (現SIOS Corp.)が開発したHAクラスターソフト「LifeKeeper」だ。アプリケーションの異常を検知し、自動的にスタンバイ機へ切り替えるという役割を担う同製品は、当初、物理サーバーのみの環境を対象とした製品だった。しかし、サイオスでは、市場の要望に合わせていち早く仮想化環境にも対応させ、集約率の向上と信頼性確保の間で頭を悩ませる企業に救いの手を差し伸べている。
では、LifeKeeperにはどういった特長があるのだろうか。以下、築山氏らの話を基に簡単に紹介しよう。
高い信頼に応えるHAクラスターソフト「LifeKeeper」
LifeKeeperは、Red Hat Enterprise LinuxやSUSEといった主要なLinuxディストリビューション、およびMicrosoft Windows Server上で動作し、仮想化環境としてVMware、Hyper-V、KVMといった主要な仮想ソフトをサポートしている、オープン環境での幅広い対応力を誇るHAクラスターソフトだ。顧客要件に応じて、物理環境と仮想化環境を柔軟に組み合わせた冗長化システムを構成することが可能となっている。
LifeKeeperは、とりわけ信頼性の高いサービス基盤への活用に定評がある。最新の事例では、カカクコムが運営する「食べログ」など4つの人気Webサイトのデータベース基盤や、インターネットイニシアティブのASP型外国為替証拠金取引(FX)システム「IIJ Raptorサービス」のシステム基盤にも、LifeKeeperが採用されている。また、スマートフォンの需要拡大に伴い、通信事業者やゲーム会社、音楽配信会社などのWebコンテンツ配信システムでの導入も目立ってきているという。
LifeKeeperの特長について築山氏は次のように説明する。
「LifeKeeperを導入していただいている企業からは、特に『導入・運用が容易である』という点で高い評価をいただいています。実は、HAクラスターソフトにおいては使いやすさ、わかりやすさというのはとても大切な要素です。なぜならば、複雑でわかりにくいものだと、導入や運用のフェーズで問題が発生しやすく、リスクが高まってしまうのです。本来リスク低減を目的としたツールですから、それでは本末転倒となってしまいます。当社の製品は標準化に重きを置きGUIのみで構築できますから、特別なコマンドを知らなくても容易にHAクラスターシステムを構築が可能です。」
こうした使いやすさに加えて、IBMをはじめとした主要なハードウェアベンダーとサイオステクノロジーが協業関係にあることも、ユーザーからの高い評価につながっているようだ。同社では、この協調関係をもとに自社製品と各メーカーのサーバーやストレージとの"推奨構成"とその構成における"手順書"をハードウェアベンダーと共同制作し、積極的に情報発信しているのである。
IBM、CTC、サイオスがわかりやすく解説
「仮想化環境の高可用性システム構築セミナー」開催
本企画で取材した3社による「高可用性システム構築セミナー」が、東京、名古屋、大阪、福岡の4都市で開催される。システム基盤設計上の考慮点から、アプリケーションの実稼働を意識したソフトウェアの紹介、安価で信頼性の高いハードウェアの選び方など、3名の有識者からさまざまなノウハウが紹介される予定だ。セミナーの詳細はこちらのWebサイトに掲載されているので、興味のある方はご確認いただきたい。