システム管理者の利点1 - 保守作業の大幅効率化
さて、以上はユーザー視点で見たVDIのメリットだが、同技術に関しては、システム管理の観点からも多くの利点が挙げられる。というよりも、むしろこちらのほうが中心と言える。以下、いくつか紹介しよう。
もっともわかりやすいのは、保守作業の効率化だろう。大企業のように数千、数万といった単位でなくても、数十人、数百人と社員がいれば、「各従業員の端末に対してセットアップ作業を行うのはかなりの労力を要する」(竹内氏)。まとまった数の端末が同時にリース切れを迎えた際などは大仕事になってしまうはずだ。もちろん、リースを利用しているのであれば、この大仕事が数年サイクルでやってくる。一度経験した方なら、「この呪縛から解放されたい」と願うのが普通だろう。
対して、VDIが導入されている環境であれば、セットアップ作業は、サーバ側で標準設定のデスクトップ環境を1つ作り、そこから人数分のコピーを生成するだけ。しかも、「一度導入してしまえば、ユーザーはハードウェアの事情に左右されることなく使い続けることができる」(竹内氏)。ユーザーから問い合わせがあった際も、ユーザーの席まで行かずとも各々のデスクトップ環境を確認できるため、管理作業に費やす時間は大幅に削減されるはずだ。
実のところ、こうした管理作業の効率化を意識したサーバ集約技術はVDIが初めてではない。以前から「シンクライント」と呼ばれるソリューションが提供され、さまざまな企業で導入されてきたが、「残念ながら、思っていたような効果が表れず、普及するまでに至らなかった」(竹内氏)という。その原因は、「管理者の業務を楽にする機能があったものの、ユーザーの利便性が確保できなかったこと」(竹内氏)にあるようだ。
「シンクライアントシステムの多くは、専用クライアント端末が必要なうえ、そのコストがユーザー企業の期待額よりも高く利用範囲が一部の業務に限られてしまっていた。しかし、VDIでは、社内の大多数のユーザーがメリットを享受できる。導入効果が大きく、これからの普及が見込まれる技術と言える」(竹内氏)
システム管理者の利点2 - コスト削減
さらに、こうした作業の効率化は、運用コストの削減という効果ももたらす。単純にセットアップ作業に要する人員を減らせるだけでなく、社内運用ポリシーに反したユーザーを見つけることも簡単で、わざわざネットワーク上に"網"を張ったりする必要もない。
また、現在、多く企業では、「OSのバージョンアップに合わせてPCも刷新するというのが一般的」(竹内氏)だが、仮想デスクトップ環境であればPCとOSを切り離して運用できるため、「OSのリリースサイクルに縛られることなく、長期間にわたってPCを使い続けることが可能」(竹内氏)だ。
こうしたコスト削減効果について、シトリックスでは具体的に試算も行っている。
「VDI導入時にはサーバやストレージの購入、ネットワークの増強などで初期コストが大きくなるケースもあるが、そのような場合も概ね3年程度で回収できる。大企業のみならず、中小企業においても十分に効果が見込める技術と言える」(竹内氏)。
システム管理者の利点3 - セキュリティ強化
もう1つ、管理面で見逃せない特徴がセキュリティである。
最近では、「BYOD(Bring Your Own Device)」というキーワードが新聞紙面を騒がしている。これは、社員の私用端末(ノートPCやタブレット端末など)を業務で利用することを指す言葉で、特に予算の限られる中小企業においては今後、採用するケースも増えていくだろう。
ただし、デメリットもある。企業側で購入する端末が減り、コスト削減につながるというメリットがある一方で、業務データが個人の端末に残る可能性があるため、端末を紛失してしまった場合に、情報漏えいにつながるというリスクもはらんでいるのだ。
こうした問題に対して有効なのがVDIである。VDIであれば、データが端末に保存されることがないため、端末を紛失した際も情報漏えいを心配する必要がない。それどころか、「データはすべてサーバ側に保持されているため、端末さえ用意できれば、以前と同じ環境がすぐに手に入る。改めて資料を作り直すなどの作業を強いられることもない」(竹内氏)。
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以上のように多くのメリットをもたらすVDIだが、現在のところ、導入しているのは大企業がほとんどである。
管理の効率化や初期導入コストの関係からこうした状況になっているようだが、最近では中小企業を意識したソリューションも提供されている。では、中小企業が導入する際には、どのような点に注意するべきなのか。次回は具体的に製品名も挙げながら、ポイントを紹介していく予定だ。
中小企業向けの仮想デスクトップ環境あります
中小企業を意識して開発された仮想デスクトップ環境、それがシトリックスの「Citrix VDI-in-a-Box」だ。Citrix VDI-in-a-Boxは、低価格で設定が容易なオールインワンタイプの仮想デスクトップソリューションです。VDI-in-a-Boxにより規模が小さな企業でも、仮想デスクトップが提供する「コスト削減」、「セキュリティ向上」および「社員の生産性向上」といったメリットを享受できるようになります。
Citrix VDI-in-a-Boxの無料評価版は、こちらのWebサイトからご提供しております。
マイナビニュースでは、中小企業向け仮想デスクトップ環境「VDI-in-a-BOX」の特設サイトを開設しています。今後、同製品の紹介記事を順次公開予定。製品の特長を紹介するインタビュー記事から、製品を実際に導入して試したレポート記事までさまざまなものを掲載していきます。詳細は、こちらのWebサイトをご覧ください。