マンマシンインタフェースは2次元の女の子!?

ゼロソフトとFuture Tech Labのブースでは、一般的な組み込み/半導体とはちょっとかけ離れたイメージのソリューションが展示されていたので、最後にそれを紹介したい。

パートナー型インタフェース「Ai-gent」と銘打たれた同ソリューションなのだが、これだけ聞くと、何らかのインタフェースなんだろう、という印象しか受けないだろうが、このインタフェースは2次元の女の子だ。筆者が何を言っているかわからないだろうが、ブースで見たありのままをお伝えすると、スマートフォンやタブレットなどのユーザーインタフェースをアイコンではなく、女の子にして、彼女に話かけることで、色々なアプリを呼び出したり、彼女から逆にいろいろ提案されたり、パネルをタッチして、疑似接触によるコミュニケーションを取ったりもできるというアプリだ。

元々はインテリジェントリモコンなどの複雑かつ味気ない操作を楽しくするためのインタフェースとはどういうものか、というのが原点らしく、それを実現するためのナビゲーター/コンシェルジュを作ろうと開発が開始されたようだ。

Ai-gentの基本コンセプトは以下の3つ。

  1. パートナー・コミュニケーション
  2. マシンリンクControl System
  3. ゲノム・インタフェース

1つ目の「パートナー・コミュニケーション」とは、Ai-gentの根幹となるもので、電子機器のコントロールで用いられるインタフェースを擬人化させる、ユーザーのパートナーとしてさまざまな機器操作のサポートや、コミュニケーション相手として存在させようという思想である。

2つ目の「マシンリンクControl System」は、筆者としては面白いと思った機能で、ネットワークを介して、複数の電子機器をリンクさせ、その間をパートナーが移動して、それぞれの機器のコントロールをサポートしてくれるというもの。学習型アプリであり、それぞれの機器に応じた特長、例えばテレビであれば、「番組表、6chの今の番組は?」と聞けば「天気予報ですね」と答えてくれ、タブレットに移った後に、「メール来てる?」と聞けば、「○○さんから1通来てます」と言った具合に、答えてくれるというものだ。

そして3つ目が「ゲノム・インタフェース」。ゲノムと聞くと有機物っぽく感じるが、パートナーがパートナーとしての動作や利用履歴、キャラクタ設定、ユーザーとのやり取りによって学習した記録などの情報を、人間のゲノムと似通ったものとすることで、このゲノム情報によって、ユーザーごとに違った個性のパートナーが生み出されていくこととなる。

ゼロソフトとFuture Tech Labのブース

ちなみに、イメージキャラクターとして2種類のタイプの女の子、「神代零華」と「七瀬未来」が今のところ用意されている。まだ開発中ながら、すでにキャラクターボイス(CV)も決定しており、「コードギアス 反逆のルルーシュ」の「ナナリー・ランペルージ」役や「交響詩篇エウレカセブン」のエウレカ役、「To LOVEる -とらぶる-」の「古手川唯」役などで知られる名塚佳織さんが2キャラともに担当しており、思わず「社長、やりすぎじゃないですか」と突っ込んでしまったが、声の録音も終了しているという。

ブースのスクリーンでは、こうしたキャラクターを前面に押し出した画像が延々と流れているわけで、一瞬、違うイベントに来てしまったかのような錯覚を受ける

上述の通り、開発中のため、現在のバージョンで対応しているのは、機器-サーバ間通信、機器間の移動、音声再生のほか、端末の一部の機能制御やタッチなどによる一部のコミュニケーションにとどまっているが、開発が進めば、よりさまざまな対応や反応が可能になって、暇な時の会話の相手になってくれたり、AI学習によるユーザーの行動や対応による性格の変化、果てはしばらく使用しなければ、使用しなかったことに対して怒ったり、泣いたりするような進化(深化)が可能なシステムになるという。

パートナーとして開発中の現時点で用意されているキャラクターは2タイプある
機器間移動の様子。時間がちょっとかかっているような気がするのはネットワークの関係などによるもの(wmv形式 1.71MB 13秒)

また、コンシェルジュとしての役割のほか、Ai-gent同士がバックヤードでコミュニケーションをとることによりデータの共有が可能になったり、服やアクセサリ、髪型などのパーツをダウンロードコンテンツとして提供できるようになる予定とのこと。この先に行くと、企業とのタイアップによる既存キャラクターデータの提供やイベントとの連動なども可能になることも考えられ、単なるインタフェースにとどまらない可能性も秘めていると感じた(提供形態はGoogle Playにて基本アプリが提供されるが、その時点で表示されるのは背景のみで、有料の利用契約をすると、パートナーが登場する仕組みを考えているという)。

服や髪の色など、いろいろとユーザーの好みに応じて変更することも可能。また、タッチしたり、端末をいじったりすると、相応のリアクションもしてくれる。当然、傾けると、見える角度も変わるわけだが、どういったことになるか、気になる方はブースでじかに確認してもらえればと思う

まあ、こうしたコンセプトが受け入れられるかどうかは、実際に世に出てみないとわからないが、個人的には、新しいビジネスモデルの創出や、従来と違う角度から組み込みにアプローチする企業などが増える可能性を考えると、いいぞもっとやれ、という感はしないではない。すでに、PCからの流れで組み込み分野でも、国内外含めて、公式、非公式問わず、多数の萌えキャラが存在しているわけで、萌えキャラを活用しようという考え自体がなかったわけではないが、そのものをアプリとして使おうというレベルまで来るとは、その発想は無かった(とはいえ、筆者も日本マイクロソフトの某氏に窓辺ななみが居るなら、Windows EmbeddedとかWindows Embedded Compactもキャラクター化したらと言ったことがあるので、あまり人のことは言えない気もしないではない)。

こういった新しい試みが、組み込みの世界でどのように発展していくのかは、ある意味、興味深いことであり、そうした点では、「目標としては一年以内に製品化したい。ただし、先行してパートナーとのコミュニケーションのみを楽しむバージョンも提供するかも」とのことであったので、一日も早い製品化(と言っても、ある程度のユーザビリティや性能を実現していることが受け入れられるか否かの前提条件になるであろうが)を実現していただきたいものである。