11月16日から18日までの3日間、神奈川県・横浜市のパシフィコ横浜にて、組み込み専門技術展&カンファレンス「Embedded Technology(ET)2011」が開催されている。名称変更以前の1986年に開催されたMST(マイコン システム ツールフェア)より数えて25周年の開催となる今回は、初めての試みとして、EDAツールの展示会である「EDS(Electronic Design and Solution) Fair 2011」との同時開催という形での実施となっている。今回は、同展時会にて、特に目についた展示を行っていた半導体ベンダの様子をレポートしたい。
大手FPGAベンダ2社による28Gbpsトランシーバデモ
FPGAベンダのAlteraは同社の28nmプロセスFPGA「Stratix V」に搭載されている28Gbpsトランシーバのデモを実施、送信アイパターンの波形を見ることができる。
今回のデモはエンジニアリングサンプル(ES)品で行っているとのことだが、オシロスコープ側でイコライザなどの処理を行わずに、純粋な出力波形を確認することが可能だ。ES品はすでに国内向けにも提供を開始しており、通信インフラ分野のほか、異分野でも同トランシーバ性能を評価してみたいという企業が多数、興味を示しているという。
また、このほか、浮動小数点DSPソリューションのデモも行っている。これは、FPGAにハードウェア的に乗算器のブロックを搭載することで、単精度/倍精度の浮動小数点演算速度の向上を図ることができるというもの。浮動小数点のファンクションは加算/減算、指数、絶対値、逆列乗算などなど一通りのものがライブラリとして提供されており、MATLAB/Simulinkと組み合わせて活用することで、必要な個所だけ倍精度演算などの処理指定を行うことができるほか、ハードウェア処理により、MATLAB/Simulink(ソフトウェア)単体での処理に比べ、ヒット幅の拡大などによる演算誤差の精度向上が実現されているという。
なお、DSPの処理速度はStratixシリーズであればだいたい350MHz、Cycloneシリーズで150MHzと、ロジックエレメント(LE)数で変わるわけではなく、アーキテクチャで変化してくるという。
一方、同じくFPGAベンダであるXilinxのブースでも、同社の28nmプロセスFPGA「Virtex-7 HTシリーズ」を用いた28Gbpsトランシーバによるデモが行われており、こちらもAltera同様、ES品によるデモであるが、オシロスコープに表示されたアイパターンを確認することが可能だ。
Virtex-7 HTシリーズは同社のSSIテクノロジを採用したシリーズで2012年第2四半期からのサンプル出荷が予定されている。複数に分割されたスライスをTSVを用いてインタポーザ基板と接続することで、高い性能を実現することが可能だ。同シリーズはGTHとGTZの2種類のトランシーバを搭載している。GTHの伝送速度は13.1Gbps+とされており、GTZが28Gbpsに対応する。同HTシリーズでは最大GTZが16本、GTHが72本、それぞれ共存させることが可能であり、これらのトランシーバを活用することで40Gbpsや100Gbpsに加え、その次の規格とされる400Gbpsへの対応も1チップで可能だ。
また、GTHよりも下位の12.5Gbpsトランシーバ「GTX」を用いた10Gbpsの汎用10Gbps通信のデモも行われており、これをGTHに切り替えることで1チップで400Gbpsから10Gbpsまで柔軟にシステムを構築することが可能になるとしている。
これに合わせる形ではないが、同社パートナーである東京エレクトロン デバイス(TED)が開発中であるVirtex-7を搭載した10Gbps超えのSerDes評価用プラットフォームおよび、Kintex-7を搭載したDDR3/高速(12-13)Gbpsトランシーバ評価プラットフォームの展示も参考出展ながらされている。ただし、Kintex-7搭載ボードに関しては、近日中の製品リリースを検討しているという。
左が近日中の製品化を予定しているKintex-7搭載のDDR3/高速ギガビットトランシーバ評価プラットフォーム。右がVirtex-7搭載の高速シリアル評価プラットフォーム。こちらはまだまだ基板の修正などがあるため製品化の予定は先のことになるとも。いずれもTEDが開発、販売を行う予定 |
このほか、ARMとの協業で生み出されたZynq-7000の活用に向けたエミュレータボードのデモも行われている。これはVirtex-6およびVirtex-5を合計6個搭載し、その上でLinuxとWebサーバを動作させ、Linuxのアプリケーションとして浮動小数点演算処理としての画像処理と、ハードウェアアクセラレータとしての処理速度の比較デモを同時に見せるというもの。開発環境としては同社のISEが使えるほか、ARMの開発環境もそのまま使えるとしており、2012年第1四半期にはZynq-7000を搭載した評価ボードも提供できる見通しだとのことである。