次にRC時点ではあるが、Fedora 16に導入された基本的な新機能や改善点を見ていきたい。
主な変更点は以下のとおり。
- Linux カーネル 3.1.0-5
- GRUB2へのバージョンアップ
- GNOME 3.2の採用
- Chronyの採用
- HALの削除
- UIDの値の範囲の変更
- Firefox 7.0.1
- LibreOffice 3.4.3
- Blender 2.5にアップデート
- Aeolus Conductorの導入
- Condor Cloudの導入
- HakeFSの採用
- Perl 5.14にアップデート
- Boost 1.47の採用
- Ada プログラミングツール
- D 2.0 プログラミングへの対応
- GCC Pythonプラグイン
Linuxカーネルには、最新の開発版である3.1が入った。7月末にLinuxのバージョンが2.6から一気に3.0となった。このバージョンアップはバージョン番号の変更が目的で2.6と比べて大きな変更が入ったわけではない。Fedora 16で採用されたLinux 3.1ではXenやKVM、Btrfsへの改善が主に行われている。
Fedora 15まではGRUB1が使われていたが、これがGRUB2にアップデートされた。GRUB2では、x86/x86_64アーキテクチャ以外のサポートやGPTの正式サポート、ファイルシステム及びカーネルサポートの拡大などが行われている。
GNOME
Fedora 15よりUIがGNOME-Shellに変更されたGNOME 3.0が導入された。Fedora 16で採用されたGNOME 3.2においてもグラフィカルなUIを提供している。System Settings -> Sysitem Info -> Graphicsを開き、Forced Fallback Modeを"ON"にすることで以前のクラシカルなメニューやUIを使うことができる。
GNOME 3.2ではログイン画面、システム設定にオンラインアカウント、クイックビューワなどが変更されている。詳しくはGNOMEのWebサイトを参照されたい。
Chrony
また、標準のNTP(Network Time Protocol)クライアントとしてChronyが採用された。ChronyはNTPを使用してシステムの時刻を調整する管理ツール。通常のntpdに比べて同期が早く、メモリ使用量が少ないといった利点がある。システム設定のある日付と時刻にある"Network TIme"をONにすることでChronyを使ってシステムをネットワーク同期させることができる。NTPサーバなどの変更は/etc/chrony.confで行える。
HALの削除
Fedora 16でシステムからHAL(Hardware Abstraction Layer)が取り除かれた。HALはハードウェアアクセスデーモン。HALを利用することでユーザは簡単にハードウェアにアクセスすることができた。デバイスをすべてHAL経由にするという流れとなったがHALが巨大化してしまい、メンテナンスしづらいものとなってしまった。この問題を解決するためにHALシステムの廃止が検討され、Fedora 16で実現した。ハードウェアにアクセスできるよう代わりのデーモンやライブラリとして、udisks、upower、libudevが採用されている。
UIDの変更
Fedora 16からアカウントに使われるID番号が変更された。具体的にはユーザIDとグループIDの新規の値が変わる。Fedora 15では一般ユーザ及びグループはこれまで500以降がふられていたが、どちらも1000以降となった。もし500以降から割り振るようにしたい場合は/etc/login.defs内のUID_MIN及びGID_MINの値を500に設定すればよい。
アプリケーション関連
デスクトップアプリケーション周りではFirefoxやLibreOfficeのバージョンがあがった。Ubuntuでは11.10より標準のメーラをThunderbirdに変更しているがFedora 16では引き続きEvolutionが採用されている。デフォルトでは入っていないが3DモデリングツールであるBlenderのバージョンが2.5に更新された。
仮想化/クラウド関連
仮想環境周り及びクラウドへの強化も行われている。例えば、Aeolus Conductorというクラウド用の管理プログラムが入った。Aeolus ConductorはAmazon EC2やVMware vSphereなどのクラウドコンピュータをブラウザを介してインスタンスの作成や管理が行えることを目的に開発されているwebGUIツールだ。
一つのイメージから複数の仮装マシンを作成できるCondor Cloudというツールも入った。Condor CloudはフロントエンドとしてIaaS管理APIであるDeltacloudを、バックエンドとしてジョブスケジューラであるCondorを使っている。
ネットワークファイルシステムをスケーラブルに扱えるようHekaFSがサポートされた。10月4日にRed Hat社がGluster社を買収したが、Gluster社が開発していたGlusterFSという分散ファイルシステムをベースにHekaFSが開発されている。HekaFSを利用することで分散ストレージを柔軟に扱えるようになる。
開発者向け
他にも開発関係としてD 2.0プログラミングへの対応、PerlやBoostのアップデート、GCCのPythonプラグインなどが入った。また、Adaプログラミング用の開発ツールも追加された。Adaはfedora-gnat-project-commonパッケージとgprbuildパッケージを入れることでコンパイラやライブラリを入れることができる。