目指すのはテーマパークの再生ではない
澤田氏が目指しているのは、テーマパークとしてのハウステンボスの再生ではない。目指しているのは、「観光ビジネス都市」である。
同氏はハウステンボスの立地条件や集客ターゲット、投資規模などを考えると、テーマパークとしての存続には限界があると判断。そこで、ベンチャー企業誘致、医療観光の実現といった観光ビジネス都市という観点からの再生を図る方向性を打ち出した。
ベンチャー企業誘致の第1弾となるのが、ジャイロスコープによる「TOMODACHI FACTORY」だ。英語を楽しむアトラクションであり、7月にオープンした英語を公用語としたウォーターマークホテル長崎とともに、「イングリッシュ・スクウェア」を構成し、英語を切り口に集客を図る。これは今後の外国人観光客の集客にも効果を発揮しそうだ。
そして、今年秋からは医療観光を開始する。これもベンチャー企業との連動で取り組むものだ。「アンチエイジングや未病といった予防医療に焦点を当てたサービスを開始する。まずはベンチャー企業のソアラメディカルと提携し、温水による免疫力の向上を図る予防医療を提供する。お客様に対しては、3日~1週間程度泊まっていただき、健康になって帰っていただくという提案を行う」
さらに、大きな切り札となるのが2012年3月からの定期運航を予定している上海-長崎定期航路便の就航だ。ハウステンボスでは、すでに最大収容約1,700人、約600台のベッドが収容できる客船フェリーを取得。客船内にはミニハウステンボス、劇場/シアター、観光情報ブース、九州地域名産品ギフトショップの設置などを予定しており、約22時間の予定の航行時間も飽きずに楽しめる。同氏は、この船にカジノを設置するとして一時話題を集めたが、今でもエンターテイメント施設の選択肢としてカジノの設置を考えているのは確かなようだ。
「飛行機は短時間に移動できることがメリット。しかし、船には自由に船内を移動して、食事やゲームを楽しんだり、ショッピングを自由に行ったりというメリットがある。そして、費用も安い。飛行機の旅は移動先からエンターテイメントが始まるが、船旅は移動中もエンターテイメントを楽しめる。我々はこれを『ローコストエンターテイメントシップ』と呼び、船による楽しい旅を提案する。これからの時代は船による旅が再び見直される時代に入る」と、同氏は語る。
上海と長崎の船賃は、最低で何と7,000円という低料金を計画している。正に"ローコストの旅"を実現することになる。
夏のイベントによって集客増を目指す
新体制となって以来、「今が3度目の危機」と澤田氏は語る。最初の危機は就任時点で赤字体質だったこと。ハウステンボス内の多くの施設が閉鎖をしている状態だった。2番目の危機は3月11日に起きた東日本大震災の影響だ。これにより、1万数千件のキャンセルが発生し、新体制となって初めて前年割れとなった。外国からの来場はほぼゼロになり、ようやく6月に前年の3割程度まで戻ってきた。そして、3番目の危機が昨夏のリニューアルオープンによって前年同月比39%増という集客を記録したが、今の厳しい状態で、前年夏の実績を上回ることができるかという懸念だ。
そこで今夏は、山本寛斉氏のプロデュースによる「ハウステンボス日本一の元気祭り」を開催。土屋アンナさんによるステージや世界花火師競技会世界大会も開催する。さらに、子供たちが水に触れて遊ぶことができる「水の王国」のバージョンアップや、スリラー・ファンタジー・ミュージアムの強化、シャープとの提携による60型液晶ディスプレイ156台を使用した5D MIRACLE TOURのグランドオープンなども行った。
また、4月に登場し、早くも10万人の乗船を達成した人気アニメ「ONE PIECE」のサウザンド・サニー号クルーズを継続運航するとともに、新アトラクションとしてミニメリー号をスタート。ONE PIECEを題材にした限定グッズの新製品も投入した。
さらに10月には昨年好評だったガーデニングワールドカップ・フラワーショーinナガサキ 2011を開催。世界各国から16組のトップガーデナーが参加することになる。
澤田社長は、「これまでの取り組みに点数をつけるとすれば58点。まだまだ改善の余地はある。少なくとも70点までいけば、もっとお客様に満足してもらえるはず」――ハウステンボスの挑戦はまだこれからも続く。