IE9登場

日本マイクロソフトは4月26日、IE9日本語版の正式配布を開始した。IE9は3月14日(米国時間)には正式に配布され、日本においても3月15日での正式配布が予定されていた。しかし通信インフラへの負荷や節電への配慮など、東日本大震災の影響を考慮して提供の延期を決定。一ヶ月半ほど経過しての正式提供となった。

IE9は標準規約への積極的な準拠、グラフィックアクセラレータを活用した高速なレンダリングの実現、マルチコアの活用、高い堅牢性など、これまでのIEシリーズの中でももっとも魅力的なバージョンに仕上がっている。対応するOSは次のとおり。Windows XPはIE9は未対応となる。

  • Windows 7 32ビット/64ビット版
  • Windows Vista SP2 32ビット/64ビット版
  • Windows Server 2008 SP2 32ビット/64ビット版
  • Windows Server 2008 R2 64ビット版

Microsoftはこれまで世界最大規模のコンシューマ市場およびエンタープライズ市場におけるシェアを背景に、主要ブラウザベンダとしてはもっとも長いスパンでのブラウザのメジャーアップリリースを実施してきた。しかし、より素早く最新のWeb技術に対応するため、この方針を転換。コミュニティへの早期リリースを実施するとともに、IE9以降はこれまでよりも短いスパンでメジャーリリースを実施していくものとみられる。すでに開発者向けにIE10開発版の提供もはじまっている。

IE9インストール方法

IE9日本語版は「更新プログラム」として提供されているが、インストールするにはWindows Update経由ではなく、自らダウンロードしてインストールを実施する必要がある。ブラウザでInternet Explorer - Microsoft Windowsのページにアクセスし、該当するバージョンをダウンロードする。IE8などでアクセスすれば自動的に該当バージョンが表示される。IE以外のブラウザでアクセスした場合、一覧から該当するバージョンを選んでダウンロードする必要がある。Windows 7版で1MB前後、Windows Vista版で1.2MBほどのインストーラがダウンロードされる。

IE9のインストールを開始する前に、Windows Updateを実施して最新の状態へ更新しておく。IE9インストール時に必要なアップデートも実施されるが、はじめに自分で更新内容を確認したうえでアップデートを実施しておきたい。インストール自体で特に戸惑うことはないだろう。ダウンロードしてきたインストーラを実行して作業を進めればいい。

Windows 7 64ビット版で動作するIE8

IE9インストール後にはIE8はIE9へ置き換わる

Windows Vista 64ビット版で動作するIE8

IE9インストール後にはIE8はIE9へ置き換わる

インストールしたIE9は「アプリケーション」としてではなく、「更新プログラム」としてインストールされている。コントロールパネルから「プログラム」「プログラムと機能」「インストールされた更新プログラム」を選択することで確認できる。

更新プログラムとしてインストールされるIE9 - Windows 7

更新プログラムとしてインストールされるIE9 - Windows Vista

インストール作業自体は64ビット版も32ビット版も同じ。インストールされるIE9のバージョンも更新バージョンも32ビット版と64ビット版で同一のものとなっている。

Windows 7 32ビット版で動作するIE8

IE9インストール後にはIE8はIE9へ置き換わる

特に理由がない限り、IE8よりもIE9を使った方がいい。しかし、どうしてもIE8でなければ困るという場合、「インストールされた更新プログラム」から「Windows Internet Explorer 9」を選択してアンインストールすることで、IE8へ差し戻すことができる。

IE9の特徴

主要ブラウザの特徴はますます似てきている。どのブラウザもほかのブラウザの取り組みや新機能をみながら開発や改善を実施するため、リリースが上がるごとにどのブラウザも同じようなUIになり、同じような機能を提供し、同一の標準規格をサポートするようになってきている。

IE9はIE8から見れば驚くほど大きな変化を遂げた。取り上げるべき新機能や改善点は多岐に渡る。しかしその多くはほかの主要ブラウザも提供している。そうした中においても、IE9は次の点についてほかの主要ブラウザと比較しても注目すべきレベルに到達している。

  • 高速化されたJavaScriptエンジン「Chakra」を搭載
  • もっとも進んだGPUアクセラレーションの活用
  • 改善された通知機能の実現
  • Windowsとの高い親和性の実現
  • 優れた消費電力改善の実現

以降でそれぞれの特徴について紹介する。

高速化されたJavaScriptエンジン「Chakra」

Webアプリケーションの活用がますます進んでおり、ブラウザのJavaScriptエンジンの性能がそのままWebアプリケーションの快適さにつながるシーンが増えている。JavaScriptエンジンの高速化は主要ブラウザの間でもホットトピックであり続けており、どのブラウザもこの2年間ほどで驚くべき高速化を実現してきた。

JavaScriptエンジンの高速化でもっとも後手に回っていたのがIEだったが、IE9では一気にトップレベルのスピードに躍り出た。特にIE9のJavaScriptエンジン「Chakra」はマルチコアの扱いが優れている。IEはIE8からマルチプロセスアーキテクチャを採用し、IE9ではさらにそのアーキテクチャを推し進めている。マルチプロセスアーキテクチャはマルチコア/プロセッサの性能を発揮しやすい。JavaScriptエンジンも同様にマルチコアの性能を発揮しやすい作りになっており、最新のハードウェアの性能を活用しやすくなっている。

トップスピードで見ればほかのブラウザのエンジンの方が高速なケースもある。しかしマルチコアの活用ということになるとIE9が強い面が多くなる。

GPUアクセラレーションの活用

JavaScriptエンジンの高速化とともに、主要ブラウザの間で開発が進められている分野がGPUアクセラレーションの活用だ。グラフィック処理をGPUに振り分けることでCPUの負荷を減らし、さらにレンダリングの高速化を実現する狙いがある。

GPUアクセラレーションの活用はIE9がもっとも進んでいるとみられている。基本的にIE9はWindowsプラットフォームで動作すればよく(しかもWindows Vista以降のバージョンのみに限定)、クロスプラットフォームやWindows XPへの対応も前提としたほかのブラウザよりもこのあたりの対応が素早い。Windows 7やVistaの提供しているハードウェアレンダリングの機能を活用した高速で軽快なレンダリングを実現している。

こうしたIE9のハードウェアレンダリング機能を活用するには、PCに対応するグラフィックチップが搭載されていることが前提となる。ハードウェアが搭載されていない場合はソフトウェアレンダリングとなる。グラフィック関連はクラッシュが発生しやすいところでもあり、IE9の導入と同時に、最新のグラフィックドライバを利用しているかチェックし、古いドライバを使っている場合には最新のドライバへ更新するといった対処をしておきたい。