そして、17日のセミナーでは、高い削減実績を挙げた3社の事例が報告された。
最初に登場したのは、昼はカフェ、夜はバーという二毛作業態の飲食店チェーンを展開するプロントコーポレーションだ。同社の取り組みでは、特に社員の意識改革に重点が置かれている。これは、従業員の中にアルバイトが占める割合が高く、節水・節電という言葉だけでは、従業員の意識が切り替わらないのが問題視されていたからだという。
同社では、よりわかりやすい表現を追求した結果、「CSR」という言葉を「Customer Smile Relationship(プロントに関わるすべての人たちが笑顔になるような関係であること)」と独自の言葉に置き換えて周知を図ったという。そして、独自のキーワードの浸透とともに、若手社員を中心としたチームで、親しみやすいイラストを使った環境意識を高めるためのパンフレットを作成。さらに、具体的な業務を指示する環境マニュアルも一新して、浸透力を強めている。
店舗での自主点検チェックなど、現場での具体的な対策とともに、希望者を募ってボランディアの清掃や植樹活動などに参加することで、従業員の環境への意識を高める取り組みも行っている。店舗と本部のつながりとしては、店舗と本部の会議の議事録に環境に関する項目を設け、これらを店舗の従業員に開示することで意識改革を行うという流れや、全店舗からの省エネ状況をメールで収集して、Excelで分析を行う仕組みなどが構築されている。
また、プロント全店で2009年12月にISO 14001を取得。加盟店オーナーや取引先メーカー等、プロントに関わるすべてのステークホルダー対し、ことあるごとに同社の環境に対する姿勢を訴え、協力を求めることにも取り組んでいる。この他にも、省エネ診断受診の結果を受けて、照明のLED化を計画。夜間のバータイムにふさわしい色温度を持ったLED照明を実現すべく、独自開発にも取り組んでいるという。
2社めに登場したのは、トラックの荷台部分を製造している東洋ボデーだ。同社では、2000年にISO 9001の審査登録を行って以来、環境に対するさまざまな取り組みを行ってきたという。近年は特に原油高騰、エコタイヤの需要向上、東京都の環境への取り組みをはじめとするCO2削減の必要性などから、エコ対応のトラック需要が高まっていたという。また、これらに加え、普通免許取得後2年間は車両総重量5t以下の車しか運転できないという新免許制度も影響し、より軽量な荷台が求められてきたという。
そこで同社では、燃費改善、CO2削減、免許制度対応という3つの課題を解決するものとして、飲料水運搬用のボトルカーに、従来製品比で15%軽量化した車両を2007年に投入。さらに、2010年には25%の軽量化を実現している。
同社では、いきなり環境対策のための大きな投資は難しいことから、コピー用紙の削減や蛍光灯利用数の削減等、身近なところからスタート。中には、自動販売機の夜間照明を停止というものも実施したという。そして、同社ではこれらの活動によって削減できた経費を、次の環境対策の設備に投資するという方法を採用。新たに導入したハードウェアに関しては、単年償却を原則とした。環境のために大きな投資を行わず、企業として少ない負担でスタートさせることで成功させた事例だ。
最後に登場したのは、スーパーマーケットを運営するライフコーポレーションだ。同社では、ソフト面ではワーキンググループの立ち上げやコンサルタントによる指導、環境教育を行うとともに、啓発ポスターやステッカーの掲示を行ったという。
ポスターには、指1本で簡単にCO2が削減できるというメッセージを込めた手のイラストと「チェック」の文字のみを記載。節電・節水というようなありふれた言葉を掲げても、社員に響かないという判断で作成したという。また、短期的な目標を掲げる従業員向けポスターは、取り組み開始当初は3カ月おきに更新、従業員が通るいたるところで新しいものを目にできるようにしていたという。これは、見慣れてしまうことを避けるための取り組みだ。
ハード面では、店舗での調理器具をオール電化に切り替えることや、店舗照明のLEDライトへの取り替えなど大掛かりなもののほか、冷凍・冷蔵ブースの夜間光熱費削減を実現するナイトカーテンの設置やエスカレータの不要な照明の撤去など、細かな対策も行われた。また、冷蔵・冷凍ケースの防露ヒーターに制御装置を追加することで、季節に合わせ適切な設定切り替えを行えるように変更している。
どの企業でも大規模な省エネ装置の導入などは行っておらず、ムダの排除や意識改革など、身近な取り組みから大きな成果につなげているのが印象的だった。