絵本から広がる「くまのがっこう」の世界

――絵本のヒットの後、「くまのがっこう」グッズも大きなビジネスとなりました。

相原「ビジネスというよりは、プロモーショナルな展開として必要な絵本を売るために、グッズはあったほうがいいと考えていました。書店で絵本を売るためのディスプレイにも、グッズは必要ですし、そもそもお話がぬいぐるみたちが動いているという設定なので、グッズが必要だったんです」

――ぬいぐるみやステイショナリー、靴下など、「くまのがっこう」グッズは本当に市場に沢山ありますね。

相原「絵本の5、6冊目ぐらいからグッズが爆発的に売れ出して、累計で2,000種類ぐらいのグッズが発売されました」

――この流れは、相原さんにとって最初からの読み通りだったのでしょうか。

相原「今考えると奇跡に近いですね。今しているお話も、後付け的な部分がありますからね(笑)」

相原氏のオフィスには膨大な数の「くまのがっこう」グッズが……

――バンダイに在籍されながら絵本を起点にキャラクタービジネスを展開するというのが、とにかく意外でした。

相原「バンダイに移籍する直前に子供が生まれて、絵本を読み聞かせて絵本の魅力にはまっていたというのもあります。クリエイティブは、どれぐらいモチベーションを維持できるかが大切です。好きでない物を作っても、良い物はできません。仮にバンダイが僕に新しいガンダムやウルトラマンを作れと言っても、それは、もっとやるべき人がいますからね。あと絵本業界には、戦略的にキャラクター作りをする人がいませんでした。絵本の世界では、世界観が壊れるという理由で商品化自体を嫌がる作家も多いですから。それなら、世界観を高めるグッズを作ればいいというのが僕の考え方です」

――「くまのがっこう」というキャラクターはこれからどのように展開していくのでしょうか。2010年12月には映画化もされるなど、世界はさらに広がっているのですが。

「くまのがっこう」はぬいぐるみも大人気。画像は「モコモコジャッキー」(発売元 セキグチ 1,499円)

相原「今後の理想像はあります。キャラクターではなくて、キャラクターブランドとして確立させたいですね。グッズを売ってお金を稼ぐだけならそういうキャラクターは他にいるから「くまのがっこう」である必要はない。子供に愛されて、社会に存在価値をしっかりと作る。そういう存在になっていかないと駄目だと思うんです。ご飯を食べたくないけど、お皿の下にジャッキーの絵があるから、それを見たくてご飯をちゃんと食べる。病院が怖いけど、ジャッキーのぬいぐるみを抱いていたから大丈夫だった。そういう強い関係性を子供達との間に持ちたいですね」

――キャラクターが社会的に、ビジネス面だけでない意義や価値を持つというのは、確かに理想的な形ですね。

相原「キャラクターの社会的な価値は高くないけど、もうそういう時代ではないと思います。社会的に評価され、貢献することが大切です。商品もデザインのしっかりしたものを作り続けて、キャラクターとブランドの両方の価値を持つことを目指したいですね。そうしないとキャラクターは廃れていくと思います。『このキャラクターで1,000億売りました』とか、もう自慢でもなんでもない。ビジネスのボリュームとして考えると「くまのがっこう」は、自動車など他の製品と比べたら比較にならないほど小さいのですが、自動車にはできなくて、キャラクターにしかできないことが社会にはある。そこを極めていきたいですね」

●ジャッキーカフェ 開催決定

2011年2月16日~2月27日、東京 渋谷のカフェマンドゥーカ(渋谷区神南1‐22-11 LUMINE MAN SHIBUYA 1F)が、期間限定で「ジャッキーカフェ」となる。絵本の世界観に浸れるこのカフェでは、ジャッキー店長が登場し、「くまのがっこう」オリジナルメニューの販売も行われるとのこと。営業時間は11:00~24:00。年中無休となっている。

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撮影:石井健