芸人、構成作家、料理人、俳優など、様々な分野でクリエイターとして才能を発揮する木村祐一。2008年には映画『ニセ札』を監督し、映画監督 木村祐一としても才能を発揮した彼の最新作『ワラライフ!!』が公開中だ。様々なジャンルでクリエイターとして活動を続ける木村祐一に話を訊いた。
映画『ワラライフ!!』では、リアルな人間たちを描く
――長編2作目の監督作品『ワラライフ!!』が完成しました。
木村祐一(以下、木村)「『ニセ札』の時は、"これは自分の子供かなあ"という感じだったのですが、今回の作品は子供というか、自分の分身のような気がしています。シーンやカットに関しても全て自分の好みが出ていますしね」
――『ニセ札』は実話をベースとしていましたが、今回の作品は、木村さんの実体験がエピソードに活かされているという感じなのでしょうか。
木村「ほぼ実体験ですね。商売柄、幼少の頃のエピソードなどもネタとしてノートに書いてあるんです。『すべらない話』に出せるようなネタではないのですが、この映画のように出す場があるというのは嬉しいですね」
――非常に、淡々としているというか、良い意味で普通のエピソードが沢山描かれていて驚きました。
木村「この映画では、リアルなエピソードをそのまま描きたかったんです。観る方々には、描いてない部分を想像したり、ご自身の体験に置き換えて欲しいんです。僕自身、『こんなのあり得ないよ』という笑い話は好きじゃないんです。それは、普段の笑いの方でも出来ることなんで。家族や友達を描こうと思ったときに、現実に即して過不足ないようにしたかったんです」
――あくまでも幸せを描いていて、心底不幸なエピソードはないですね。
木村「不幸な経験もあるとは思うのですが、不幸を残さないというか、思わないんですよね。芸人ならではというか、泣けることも笑いに変えて記憶しているタイプなんです。僕は海馬がわがままというか、都合いいので、記憶も都合よくも捻じ曲げてる」
――この作品は小さなエピソードの積み重ねで成立しています。いわゆる「映画的なクライマックス」を、あえて設けていないという印象を受けました。
木村「確かに盛り上がりというのはないのですが、主人公から見るフィールドも、父、母、姉、恋人、友達と代わっていくので、楽しんでいただけると思います。『飽きさせない』と深く考えすぎると余計なものを付け過ぎてしまうので、それはしないように心がけました」