ベストセラー小説『リアル鬼ごっこ』を、大胆にアレンジして映画化した柴田一成監督。現役の会社員でありながら映画監督/映画プロデューサーとして活動する柴田監督の最新作『リアル鬼ごっこ2』のDVDが発売された。この映画の制作秘話を柴田監督に訊いた。

前作の予想以上のヒットで続編が実現

柴田一成
1967年生まれ。東京都出身。パイオニアLDC(現ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント)入社後、自身の映画企画『もうひとりいる』をキングレコードに持ち込み、会社員でありながら2002年に映画監督デビューを果たす。他の作品に、ベストセラー小説を原作とした『リアル鬼ごっこ』(2008年)。『リアル鬼ごっこ2』(2010年)。プロデュース作品に『渋谷怪談』(2004年)、『蝉しぐれ』(2005年)、『笑う大天使』(2006年)、『スピードマスター』(2007年)、『魍魎の匣』(2007年)、『携帯彼氏』(2009年)、『携帯彼女』(2011年)など多数

――続編の構想は、『リアル鬼ごっこ』の頃からあったのですか?

柴田「まったくなかったですね。ありがたいことに、『リアル鬼ごっこ』が劇場でヒットして、DVDもヒットしました。それで、続編の企画が動きだしたんです」

――1作目も、「佐藤さん」、「王様」、「鬼ごっこ」以外は、ほぼオリジナルといっていい作品でした。今回もまったく違う話を予想していたのですが、完全に映画版の続編になっていたのが意外でした。

柴田「前作は『佐藤』が標的だったので、今度は『鈴木』という案もあったのですが(笑)、前作で僕がパラレルワールド=並行世界という設定を考えてしまったので、それはどうしても無視できなかったんですよね。人をパラレルワールドに飛ばす能力を持つ人間が主人公の妹である佐藤愛という設定だったので、主人公も必然的に前作同様、佐藤翼になりました」

――予算もスケールアップしたのか、アクションや映像も前作よりパワーアップしています。

柴田「前作で予算がなくて実現できなかった部分を、今作ではカバーできたと思います」

――アクションも前作のようにひたすら走るというだけでなく、多彩になっています。格闘シーンや、高所から落ちるシーン、銃撃戦なども印象的でした。

柴田「予算だけでなく、主演の石田卓也君をはじめ役者達がクランクイン前に覚悟して身体作りをして激しいアクションにも対応してくれたのも、パワーアップできた大きな要因ですね」

リアル鬼ごっこ2

前作から半年。佐藤翼は、全国の"佐藤さん"が迫害を受ける新たなパラレルワールドで、レジスタンスとして戦っていた。鬼から必死で逃げる翼は、数人の鬼を引き連れて、現実世界に戻ってしまうのだった……。
(C)2010「リアル鬼ごっこ2」製作委員会

――鬼のデザインも大幅に変わりました。

柴田「前作とはまた別の世界なので、今回の鬼は同じ鬼ではないんです。映画の続編モノというと皆さん新キャラを期待されますし、そういう意味でも鬼のデザインは気合が入りました」

――前作の鬼は不気味ながらも、どこかコミカルな印象がありました。今回はエッジが立ったデザインで、正統派というかストレートに怖い姿になっています。

柴田「かなり悩んだのですが、今作では鬼のデザインもシリアスな方向に持っていきたいという意図がありました」

――この作品をどのように楽しんで欲しいですか?

柴田「前作のファンには、よりパワーアップした『リアル鬼ごっこ』を楽しんで欲しいですね。1作目を観ていない人にも楽しめる作品を目指したので、いきなり『2』を観ていただいても楽しめると思います。それから『1』を観ていただくというのもありですし」

――ところで1作目同様、『猿の惑星』的なラストでしたが、『3』はあるのでしょうか?

柴田「あのラストはお約束という感じですね。『3』もういいでしょう。さすがに続編はないと思います(笑)」

柴田監督が語る「これからの映画監督に必要な資質」とは。