近づく人種や国籍とは無関係に実力で判断される時代
もちろん、40倍もの競争率の入試を突破して入ってきた学生であるので、インドの中でも優秀な学生が集まっており勉学意欲が高いという面はあるが、やはり、インドの学生の授業態度は、日本の学生と比べると、非常に真剣である。後で述べるが、全体としてはインドは、まだまだ、貧しい国である。やはり、技術を学んで国を発展させる、そして、自分も豊かな生活を手に入れたいというというハングリー精神が強いように感じた。
日本も高度成長の時代まではハングリー精神があったと思うのであるが、それ以降、社会が豊かになるにつれてハングリー精神は無くなってしまった。まあ、大学を出て就職すればそこそこの生活は送れるということで、親も(塾へは通わせるが)本気で子供の尻を叩かなくなったし、子供も何とか生きていけると感じているのではないかと思う。そして、大学に行く目的が知識や技術を学ぶというより、就職のパスとなる卒業証書を手に入れるということにすり替わってしまっている感がある。
しかし、法人税率が高く、FTAも進まず高い関税を払わざるを得ない日本から企業は脱出し始めており、社内公用語を英語にしたり、過半数の人員を国外で採用することを決定したりと世界中の人材を活用するようなご時勢である。この先、採用は人種や国籍とは無関係に実力で判断されることになると、個人差は当然あるが、平均的には、日本の学生はインドの学生にはとても敵わないのではないかと思う。
国内では今のような就職氷河期が続き、日本企業の採用も海外シフトが進むことで、日本の学生も大学で真剣に学んで実力を付けようということになるとしたら、皮肉であるが、この傾向も悪いことばかりではなく、将来の日本の再生につながるかも知れないと思う。
ジャバルプルの風景
ジャバルプルは首都ニューデリーからほぼ南600Kmに位置する地方都市である。2001年の国勢調査では人口は約130万人である。宿泊したホテルはNarmada Jacksonsという、最初は植民地時代に英国人が築いたという伝統あるホテル。インドに行く前に、利用した人の口コミなどをWebで読んだのであるが、従業員が礼儀正しい、部屋が広いと高い評価をつけるものと、もう二度とは泊まらない、人にも勧めないという最低評価に二分されていた。
写真に見られるように、入り口は立派、従業員も礼儀正しく親切であるが、部屋の広さはともかく設備は欧米のホテルはもちろん、モーテルと比べて良いとは言えない。また、敷地が狭く、両隣は同じくらいの高さのアパートである。筆者の部屋はそうではなかったが、窓を開けると隣のアパートの壁だったという人は二度と泊まらない評価である。また、インド人はお祭り好きで、インド音楽を大音量で鳴らして踊るパーティーが頻繁に開かれる。筆者も到着当日にこれを夜の11時過ぎまで聞かされた。同様の経験をした人も最低評価を付けている。ということで、自分で泊まってみると、最高の評価も最低の評価も納得できる。
このホテルはジャバルプルの中心街からは少し離れており、中心街にはもっと小奇麗な店もあるのであるが、ホテル近辺の店は、言い方は悪いが、かなりうらびれ感がある。
また、市民の交通手段としては自転車やオートバイが多い。また、タクシーに相当するものとして、サイクルリキシャ(自転車で2人乗りの車を引っ張る)や3輪車が多い。
ニューデリーではオートバイの運転者はヘルメットの着用が義務付けられているが、ジャバルプルではそういう規則は無いらしく、ヘルメットは全く見かけなかった。
講義を行ったIIITDM-Jはホテルから8km位のところにあり、その先をさらに4kmくらい行くと空港があるという道沿いで、都市間を結ぶ州道ではないが、まぁ、主要な道路の1つではないかと思うのだが、大学から空港あたりは片道1車線ずつで中央分離線があるが、市街地を出るあたりでは1車線の対面交通である。
日本の常識から言うと、十分、先端的なところもあるのであるが、全体としては、まだまだ貧しい国で、それがハングリー精神をはぐくみ、急速にインドを押し上げていると感じた。もちろん、インドや中国も豊かになれば今の日本のようにハングリー精神は消えてしまうのかも知れないが、起こるとしてもそれは50年も100年も先の話であろうし、むしろ、それまで日本がもつのかどうかの方が心配である。