アニメ/実写『もやしもん』、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』など、数々の話題作を送り出してきた映像製作プロダクション・白組。CG、映像、VFXを駆使する同社は、ワークステーション、サーバ、ストレージなどITシステムへの投資を惜しまない。
同社はワークステーション「Dell Precision T5500」を中心に、デルからハードウェアを購入している。今回、デルの宮崎カスタマーセンターで開催された社員向けのセミナーにおいて、白組は顧客の立場から、「どのような観点からハードウェアを購入し、システムを構築しているか」などについて説明した。セミナーでは、実写ドラマ『もやしもん』のメイキングの例を交えながら、映像やCG制作の現場におけるITの利用についても紹介された。以下、そのセミナーの模様をお届けしよう。
まずは、システム部部長を務める鈴木勝氏が、ワークステーション、モニター入れ替えのタイミング、ファイルサーバ購入のプロセスなど、同社におけるITシステムの購入のプロセスについて説明を行った。
以前は、アニメーションの創作に適したコンピュータがないということで、自分たちで作りこんだシステムを使うしかなかったが、それではマシンによって構成が違ったりして効率が良くないということで、ワークステーションに一斉に入れ替えることにしたそうだ。
また、映像は1人で作れるものではなく、チームで作り上げていかなければならないことから、サーバを導入。サーバも当初はタワータイプを利用していたが、必要なディスク容量がどんどん増えていったため、ラックタイプに切り替えられた。サーバは30台ほど導入されており、それぞれ10TBのDASが接続している。ファイルサーバ間の接続は10Gbps環境に移行中だ。
続いて、同氏はワークステーションを選定する際、「CPU」「VGA」「RAM」「HDD」において検討する項目について述べた。1つ目のポイントは、購入後に交換およびアップグレードが可能かどうかだ。例えば、デルはHDDが故障した場合、3年保証サービスに加入していれば代替のパーツを出してくれるため、非常に助かっているそうだ。
また、OSはメモリのメモリ容量が大きいことから64ビット化を進めており、購入時はWindows 7の64ビット版を選択している。
加えて、スペックは購入時点で最大の構成にするのではなく、どのようなサイクルで交換が行われるかなどを踏まえて3年先ぐらいを見越して、決定している。
なお、サーバは置いているが、アーティストの作業効率を考え、ローカルのワークステーションはニーズに応じてハードディスクの容量を潤沢にしている。「ワークステーションを自由に使ってもらっている分、マシンの入れ替えの際など、データの整理はアーティストにやってもらいます。それ以外の部分はシステム部が頑張ればいいと思っています。よい作品を作ることに、アーティストには集中してもらいたいのです」
製作プロダクションらしく、モニターにも当然、こだわりがある。モニター選定のポイントとしては、「低価格」「同じ機種が長期にわたり供給されること」が挙げられた。監督と作業者のモニターが違うと、映っている絵が異なり、作業に支障が出るというわけだ。
また、「キャリブレーション機能を搭載しているモニターはメリットが大きい」と同氏は付け加えた。というのも、キャリブレーションを備えたモニターなら、ITスタッフがわざわざアーティストのところに出向いて作業しなくても、高度な色のマッチングをアーティスト自身に任せることもできるからだ。
ファイルサーバ導入のポイントとしては、CALが不要なWindows Storage Serverを利用していることが紹介された。ワークステーションと同様に、HDDの保守サービスも重要だ。「HDDを長期間保存しておくのは大変。いつでも手に入れられるという安心感は嬉しい」と同氏。加えて、同社が重要視しているのが拡張性だ。モジュール型ディスクストレージアレイの. Dell PowerVault MDシリーズによって、バックアップの拡張性を確保している。