OSSにさらなる革新をもたらすMeeGo

続いて登壇したのは、米IntelでChief Linux & Open Source Technologistを務めるDirk Hohndel氏。氏は、開発者の立場からLinuxをベースとした組み込み向けOS「MeeGo」の概要を紹介した。

MeeGoの成り立ちと開発体制

米Intel, Chief Linux & Open Source TechnologistのDirk Hohndel氏

MeeGoは、約7ヶ月前にスタートした、フィンランドNokiaとIntelが共同で進めるオープンソースプロジェクトだ。Hohndel氏は、NokiaとIntelの共同プロジェクトという形態をとった経緯について、「両社はそれぞれ『Moblin』と『Maemo』というプロジェクトを進めていたが、互いにオーバーラップする部分が多かった。であれば、オープンソースはもともとシェアして開発するものなのだから、統合してしまえばよいのではないかという話になった」と説明した。

そのような巨大IT企業2社をバックボーンに持つMeeGoだが、実態はオープンソースプロジェクトそのものだという。

「両社から多くの技術者を投入しており、多少の利害関係はあるが、開発プロジェクトはコミュニティが動かしているし、開発メーリングリストもオープン。プロダクトに関しても、LinuxコアからGUIフレームワーク、ツールまでフルオープンソーススタックになっている」(Hohndel氏)

さらにHohndel氏は、Linux Foundationのこれまでの功績を挙げて同団体のOSS推進能力の高さを称えたうえで、「Intelとしては、将来的にLinux Foundation直轄のプロジェクトにしてもらいたいと思っている」と続けた。

Linux全体への貢献を考え、Upstreamに成果物を返還

MeeGoでは、OSSプロジェクトとして最大限の貢献ができるよう、成果物の扱いについても工夫を凝らしているという。

「一般のOSSプロジェクトでは、何かを基に新たなプロダクトを作る場合には、フォークという形態がとられる。すなわち、コピーを作ってから、そのコピーに対して次々と変更加えて新たなプロダクトを作っていく。しかし、この形態では複数のプロダクトで同じ機能を開発することになる危険性がある。そこで、MeeGoでは、Linux全体で共有できる機能を開発した際にはそのソースを極力Upstreamに"返し"、それをLinuxカーネルに反映してもらったうえでMeeGoに取り込むという形態をとっている」(Hohndel氏)

こうすることで、メンテナンスがしやすくなるうえ、開発過程で関わるエンジニア/ユーザーの数が大幅に増えるため、バグを減らすことにもつながる。さらには、OSSのエコシステム全体が活性化し、より迅速に革新を遂げられる環境が作れる。Hohndel氏は、「もちろん競合他社にも有利に働くことになるが、この形態にはさらに大きなメリットがある」と続け、OSSのパワーの大きさを改めて強調した。

MeeGoでは、自分たちの成果物をUpstreamに渡し、Linuxカーネルを通じて新機能を取り込む

Hohndel氏は最後に、「MeeGoは、タブレットPC、自動車、TVへの組み込み作業が進められている。来年はぜひ実物をお見せしたい」と今後に対する期待感をあおり、講演を締めくくった。