360度パノラマカメラ「Ladybug3」と、クライマックスの壮大なロケ
――今回も確立された原作を映像化する難しさがあったと思います。特に世界中を魅了するという歌声を映画で表現するのは、かなり困難だったと思うのですが……。
堤「音楽に関して、今回のあのアイデアは面白いと思いましたね。過剰に描くという方法が多い中で、今回の方法論は面白かったと思います。そのうち、僕は顔を見せない映画っていうのも作るかもしれない(笑)」
――今回、「Ladybug3」というカメラを、ライブシーンの撮影で導入されています。これは、堤監督のアイデアだったのでしょうか?
堤「そうです。以前、レミオロメンのPVで使ったのですが、面白い画が撮れるカメラなんです。今回、映画で初めて使いました」
――どのようなカメラなのでしょう?
堤「1台のボディの中に、6台のカメラが内蔵されていて、地面以外の6方向の動画を同時に撮影できるんです。映画では、それをデータ的に圧縮してひとつの画として構成しています」
実際の夏フェス会場を、そのまま撮影に使用
――クライマックスのライブシーンの撮影なんですが、「Ladybug3」を使用したというだけでなく、実際のフジロックフェスティバルの会場で撮影されていますね。
堤「フジロック終了直後から、3日間そのまま会場を借りて撮影しました。ただ、コントロールブースや飲食のお店などはすでに撤収しているので、それらはすべて作り直しました」
――フェスの会場をそのまま映画撮影に使うというのも凄いアイデアですね。
堤「フジロックのスタッフの方々が、『BECK』が大好きということで、協力していただき実現しました。PAとライティングのチームは、そのまま2009年のフジロックのスタッフの方々なんです」
――フジロックの会場は天候が変わりやすいことで有名ですよね。
堤「会場だけでなく、天候も奇跡的にマッチングしたんです。シーンとして雨が欲しいシーンで雨が降り、降り止んで欲しい場面で雨が上がったんです。あれは奇跡でしたね」
――この作品はロックに興味のない人も観ると思うのですが、堤監督としては、どのように楽しんで欲しいですか?
堤「稀代のイケメンが勢ぞろいという要素も確かにあるのですが、奇跡が起こりロックバンドが化けていき、メンバーの人生が思いもしない方向に転がっていくという過程を楽しんで欲しいですね。そこがロックの面白い部分だとも思うので。ただ、ロックバンドが題材ですが、これはスポーツでも何でも、普遍性のある話だと思います」