難易度の引き上げの影響をもろに受けた東京Bブロック

ETロボコン 2009の閉幕時、運営側からは来年、レギュレーションが一新されることから、コースの難易度を引き上げ、センサを狂わせることを目指すという宣言がされていたが、その影響をもろに受ける結果となったのは、4日の東京Aブロックよりも、むしろ5日に開催された東京Bブロックであった。

前日の4日に開催された東京Aブロック以上に完走率が低い結果となり、参加登録数37チームの内、当日参加した33チームにて競技が行われた(モデル審査が提出できなかったチームはエキシビジョンとして参加)が、完走率はなんと、1回目、2回目の走行ともに18%で、2回とも完走できたのは2チームだけ、という結果となった。

実際、こうした完走率の低さから参加者からは、会場を使っての試走会などを行い、本番に向けた対策をとらせてもらいたいという声が1日目も2日目も聞かれた。確かに、新人技術者育成という観点からみれば、本番環境で何度もトライ&エラーを行い、問題解決に挑むのもありかもしれないが、レギュレーションの変更に伴う、コースの難度の引き上げもあったであろうが、これまでの参加チームの技術者達の努力による性能の向上を見ると、来年のETロボコン2011では、そうした経験を踏まえて、多くのチームがあっさりと克服してしまうのではないだろうかという気もしないではない。

東京地区大会でのスタート直後の様子。スムーズに第1コーナーを2台揃って曲がっていく場合もあれば、右の画像のように第1コーナーにたどり着けずに転倒してしまうマシンも多くも見られた

また、運営側としても、ETロボコン2009で今年以上に太陽光の影響が激しい中、そうした外乱要因をものともせずにすばらしい走りを見せてくれたチーム「まいまい」の走行方式の採用などを促すなどの指針を示しており、実際に走行終了後のワークショップでは、採用した複数チームよりその効果が大きく、光の強弱も気にしないで良いため開発も比較的楽であったという声が出ており、今後、そうした過去の技術資産の有効活用を進めることで完走率の向上が進むのではないだろうかと思われる。

ただし、そのような熾烈なサバイバルレースの中、見事に難所をクリアして見せてくれたチームも複数あった。特に「芝浦雑伎団」はミステリーサークルに挑戦、見事に成功させてみせ、会場から割れんばかりの拍手が送られていた。

動画
ミステリーサークルの通過に成功した芝浦雑伎団の走行の様子(wmv形式 8.84MB 1分9秒)

厳しく険しいチャンピオンシップへの道

各地区大会のスケジュールは、9月4日、5日の東京、九州の2大会を皮切りに、9月11日、12日に南関東、9月18日に北陸、9月19日、20日に関西、9月23日に東北、9月25日、26日に東海、10月2日に北関東、10月10日に北海道と続き、そして10月16日の沖縄大会ですべて終え、それぞれの地区で選抜されたチームが12月1日より開催されるEmbedded Technology 2010の特設会場で行われるチャンピオンシップ大会へと駒を進めることとなる。

東京地区大会からは1日目、2日目それぞれ5チームが選抜される。他の地域は北海道が1、東北が4、北関東が2、南関東が5、東海が6、北陸が1、関西が5、九州が5、沖縄が1となっており合計40チームがチャンピオンシップに出場する権利が与えられる。

各地区大会では、競技部門上位3チーム、モデル部門上位3チーム、そして総合部門上位3チームに対して表彰が行われる。

東京Aブロックの結果

東京Aブロックの競技部門上位3チームは、以下のとおりで、1位を勝ち取ったのはライントレースではなくSimulinkを活用し、コース上を自由自在に走ったMashi-Mashiとなった。

競技部門

  • 1位 Mashi-Mashi
  • 2位 HASH UFO
  • 3位 チーム○
動画
ライントレースを用いずにコースを自在に駆け回るMashi-Mashiのマシンの様子(wmv形式 10.6MB 1分23秒)

同じくモデル部門上位3チームは、以下のとおり。

モデル部門

  • エクセレント・モデル(1位) HASH UFO
  • ゴールド・モデル(2位) 田町レーシング
  • シルバー・モデル(3位) 勝(かち)ロボ

そして総合結果は以下のとおりとなり、以下5チームにチャンピオンシップへの出場権が与えられた。

総合結果

  • 優勝 HASH UFO
  • 準優勝 田町レーシング
  • 3位 Mashi-Mashi
  • 4位 勝(かち)ロボ
  • 5位 selfD

東京Bブロックの結果

一方の東京Bブロックの結果は以下のとおり。

競技部門

  • 1位 芝浦雑伎団
  • 2位 ロボーの石
  • 3位 チームHULAパンダ

モデル部門

  • エクセレント・モデル(1位) 蕨レーシングチーム'X
  • ゴールド・モデル(2位) チームHULAパンダ
  • シルバー・モデル(3位) 飯亭ロボ魂 PART1

総合結果

  • 優勝 芝浦雑伎団
  • 準優勝 チームHULAパンダ
  • 3位 ロボーの石
  • 4位 Staray Cab 05
  • 5位 笑's 三人娘

九州大会の結果

また、九州大会の結果は以下のとおりとなった。

競技部門

  • 1位 SAGA組込ソフト研究会
  • 2位 UNCTインスツルメンツ
  • 3位 とーんこっつ

モデル部門

  • エクセレント・モデル(1位) SOROT
  • ゴールド・モデル(2位) SAGA組込ソフト研究会
  • シルバー・モデル(3位) JKフリップフロップ2

総合結果

  • 優勝 SAGA組込ソフト研究会
  • 準優勝 SOROT
  • 3位 NiASET
  • 4位 とーんこっつ
  • 5位 JKフリップフロップ2

困難を乗り越えることこそが組み込みの醍醐味

2日間に渡って東京地区大会を統括した地区実行委員長の宮川芳之氏は、2月から今日まで大変だったはず、と参加者達の苦労をねぎらった。しかし、東京会場は環境的に非常に厳しい状況と、その厳しさを認めつつも、「目の前に困難があるのであれば、それを工夫して乗り越えていくのが組み込み」と指摘、「まいまい」式の走行が今年改良されたことなどに触れ、「コースの難易度もあるが、それ以外の環境含めて乗り越えないいけない課題であるというのであれば、組み込みの意味を考えれば、それもETロボコンの姿としてあっても良いと思う」とし、ETロボコンを通して、自分と仲間が成長を果してもらいたいと述べていた。

すべてのレースが終わった後に開催されたワークショップにて総括を行った東京地区の地区実行委員長である宮川芳之氏

また、チャンピオンシップに駒を進めたチームの多くが、多くの難所に挑戦することを抱負として明言したり、東京にチャンピオンフラッグを持ち帰ることを明言してくれたことを受け、会場の環境が厳しかったことを振り返りつつ、その厳しい条件で勝てたチームであれば、チャンピオンシップでも勝てるとの想いを語り、しっかりと上位、そして優勝を狙ってきてもらいたいとエールを送っていた。