高校生を対象とした世界最大規模の科学コンテスト「Intel ISEF (Intel International Science and Engineering Fair)」についてお伝えするレポート第4弾では、アワード受賞式の様子や今年の最優秀賞受賞者たちを紹介する。参加国別のお国柄や女子高校生の活躍ぶり、そして特徴や傾向などについても触れることにしよう。

国際科学チャレンジ『Intel ISEF 2010』取材レポート

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■世界が評価する日本の高校生科学者たち、その意識とは - ISEF 2010
■科学分野ではグローバルレベルの若手育成が始まっている - ISEF 2010

テキサスの女子高生がゴードン・ムーア賞

ISEFの最終日には、審査発表と授賞式が行われる。発表は、会場に集まったファイナリストたちの中から、「グラミー賞」のように表彰者が呼ばれてステージに上がる方式だ。スポーツ観戦や音楽コンサート並みに歓声が上がり、盛り上がる。マイクロソフトの学生向けコンテスト「Imagine Cup」もそうなのだが、こういったイベントの演出は、米IT企業の得意とするところで、「ワクワク」させるのがとても上手い。

17の科学部門と生命科学、そして物理化学のチーム・プロジェクト部門から1~4位がまず選出された後、さらに部門最高賞の17人が決まる。部門最高賞の賞金は5,000ドルだが、興味深いのは、この受賞者の学校とその学校が参加した Intel ISEF関連フェアにも1,000ドルの補助金が贈られることだ。人材を育てるサポーターを応援しようということなのだろう。

昨年までは、部門最高賞の中から優秀賞(インテル青年科学賞)3人を選択していたが、今年からは優秀賞の中からのさらにトップを決めようと、「ゴードン・ムーア賞」が新設された

授与式は「グランドアワード(大会優秀賞)」「スペシャルアワード(企業や団体)」「ガバメントアワード(政府関係)」に分けて、2日間に渡り行われる。1000人以上もの審査員が審査した数々の賞が用意されている

大会では、さらにカテゴリ最優秀賞から選ばれる2名の「インテル青年科学賞 (賞金50,000ドル)」と「ノーベル賞授賞式への参加権」といった優秀賞が用意されている。新たに今年から大会の最優秀賞として、「ムーアの法則」で知られるゴードン・ムーア氏の名を冠した「ゴードン・ムーア賞」が設立された。

今年が初となる「ゴードン・ムーア賞」と大学奨学金として用意された75,000ドルを獲得したのは、テキサス州の高校3年生のエイミー・チャオさんであった。

「光線力学的療法(PDT)のための量子ドット感光剤の開発」と題したプロジェクトで「ゴードン・ムーア賞」を受賞し、奨学金75,000ドルを獲得した米テキサス州の高校3年生のエイミー・シンディ・チャオさん。インテルCEOのオッテリーニ氏と

研究内容は、新しいガン治療法である光線力学療法 (PDT) に使用するための、新しい感光剤の開発である。研究過程では、臨床試験を行い、彼女の開発した感光剤が、PDTに必要な過程である一重項酸素生成の方法として、実現可能だということを実証している。

さらにチャオさんは、紫外線の代わりに近赤外線を使い同じ効果を実現することに成功しており、これによって健康な組織が損傷されるのを防ぐことができるという。この研究は、ガン治療の改善に大きな影響を与えるかもしれないと評価を受けた。チャオさんの研究当時の年齢は15歳だ。

ちなみに2009年の本フェアでは、3名枠の優秀賞に選出されたのは、バージニア州の14歳(動物科学)、テキサス州の17歳(環境科学)、マサチューサッツ州の16歳という、女子高校生の3人だった。(インタビュー動画はこちら)

日本から参加した仲田穂子さんは、チャオさんと展示ブースが隣だった。そこで彼女のプレゼンテーションを見ていて衝撃を受けたという。「私は、日本では自分の言いたいことを、割ときちんと言えるほうだと思っていたのですが、チャオさんのプレゼンを見て全くレベルが違うと感じました。論理立てて話すということもですが、そこには研究に対する情熱がすごく感じられた。どんな切り口で質問を受けても、間を置かずにきちんと受け答えをし、積極的に説明している様子を見て、これが『プレゼンテーションなんだ』と思いました」(仲田さん)

次点にあたる『インテル青年科学賞』には、オレゴン州のケビン・エリスさん(左)の「マルチプルマイクロプロセッサーの動的分析による自動並列化」と、エール・ファンさん(右)の「NP完全問題と物理的問題のための断熱量子過程」が選ばれた

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