DreamweaverによるHTML5のサポートは、Adobeがデザイン面においても同技術の影響力を高く評価しているという現れでもある。実際、Google I/Oに同社CTOのKevin Lynch氏が行ったSneak PeekではHTML5のデモが大きな反響を呼び、それを目にしたFernandez氏はWebデザインにおける重要性を再確認したという。一方で同氏は、デザイナーとってもっとも強力に活用されるのはHTML5よりもCSS3の方ではないかとも語っている。

「HTML5には革新的な技術が多数導入されていますが、それだけに、ある程度技術的に深い部分まで検討してから取りかかる必要があります。一方でCSS3はデザイナーにとってすぐに利用できる位置にあるものです。特に注目を集めているのは領域の角に丸みをもたせる表現やアニメーション、色調の指定といった部分でしょうけど、これらは主要なブラウザですでにサポートされており、デザインの幅を広げるために極めて有効なものとなっています」

前述のように、HTML5 Packを活用すればより容易にHTML5やCSS3を利用したWebサイトデザインを行えるようになる。では逆に、ツール任せにしないでデザイナー自身が意識しなければならない注意事項はあるだろうか。これに対してFernandez氏は、「一番重要なのは、HTML5やCSS3で何ができるかを考えるのではなく、デザインの目的が何であり、それをHTML5やCSS3でどう実現できるのかを考えること」だと指摘している。

デザイナーと開発者の境目があいまいになりつつある現在、Webデザイナーの負う責任も変化しつつあると語るFernandez氏。デザイナーには自分自身のめざすところ - "design objective"を大切にしてほしいと言う

「どういうデザイン目的に対してコミットしていくか、これはデザイナー自身が考えなくてはならないことです。どういうデバイスをターゲットにするのか、堅牢性についてはどうするのかなどです。技術的なサポートはすでにあるので、どうやって問題を解決するのか、その"HOW"の部分に対する視点を明確に持つことが重要だと思います」

また、タブレットPCのような新しいデバイスが次々と生まれてくる現在の市場では、デバイスごとにどういうアプローチでデザインを組み上げていくかを考えることも重要だと同氏は語っている。例えばひとつのソースで多数のデバイスに対応するような汎用性の高いサイトを構築することもできるし、特定のデバイス向けに最適化されたサイトを作り込んでいくこともできる。Dreamweaver CS5ではどのようなシチュエーションにも対応できるが、いずれにしてもこの領域でリーダーになるためにはデザイナー自身が適切なアプローチを見つけていかなければならないとのことだ。

最後に、Fernandez氏に日本のデザイン市場やデザイナーに対する印象を聞いてみた。同氏は、あくまでも個人的な意見と前置きした上で、次のような心強い答えを聞かせてくれた。

「日本が持つ匠の世界というのはすばらしいもので、これは米国の他のデザイナーも同じように感じているのではないかと思います。日本のデザイナーや開発者は、何かに特化した部分を得意とする専門家という印象が強いです。(日本市場のガラパゴス的な性質を指摘すると)日本のデザイナーが世界で不利な立場にあるとはまったく思いません。欧米の企業が新しい発表をする上で日本市場は絶対に無視できない存在です。しかし外国人のデザイナーがそこで活躍するためには日本市場の性質をよく知っておかなければなりません。ですから、日本のデザイナーはむしろ世界的に見ても有利な立場にあると言えるかもしれません」