社会インフラをグローバルに提供する

社会イノベーション事業の強化は同社の経営方針にもなっているが、中西氏はそこで重要になってくるのが「トータルエンジニアリング」であると説明。これは、複数システム間の相互連携やニーズに対応したサービス・システム設計、運用・維持・保守といった要素を提供できる力を示すものとされているが、同氏は、同社が「これらの条件を満たす力を持つ世界有数の企業」であると語り、具体的な事例として南アフリカ共和国での石炭火力発電事業や英国での鉄道事業(CTRL: Channel Tunnel Rail Link)、アジアや中東諸国におけるエレベーター/エスカレーター事業への取り組み状況を紹介した。

受注失敗などの苦労の末に高い評価を得ることになった英国での鉄道事業

中西氏は、これらの事例に共通する同社の強みとして、「現地のニーズへの対応力」を挙げている。南アフリカ共和国では「国策として望まれていた産業力と人材育成強化」に対し同国の電力不足緩和に貢献するとともに、計1400人の技能工の育成を実施。英国では2012年のロンドン五輪開催に向けた鉄道輸送力増強のニーズへの対応のみならず慢性的な運行遅延を解消するなど、日本で培ったノウハウを生かすことで、英国だけではなくドイツやスイスなどの周辺諸国からの注目を集めることにも成功した。

100年後の研究者がデータを参照できるしくみ

今回は米国における「社会インフラ」の導入事例の1つとして、同社が米国航空宇宙局(NASA)に2008年に納入したストレージシステム「Hitachi Content Archive Platform」があらためて紹介された。

NASAで運用されているストレージシステム「Hitachi Content Archive Platform」

ストレージ事業は同社の情報通信事業において大きな柱として位置付けられているが、中西氏は「あらゆる文書が電子化されることによってデータ量が膨大になる」ことから、企業において今後データの「保管」や「必要なときに迅速にデータを取り出す」といったことがますます重要になるとしている。

なお同システムは、「100年経っても、研究者がデータを参照できるようにする」(中西氏)ほどの「長期保管・運用」を可能にすることもポイントとなっている。

NASAで運用されているストレージシステムは、衛星から送られてくる1日あたり50GBの観測データの処理・分析などを実現しており、NASAが同システムを採用したポイントは「シンプルな運用」「ハードウェア更改の容易性・透過性」「標準的なプロトコルのサポート」「先進的なコンテンツ管理ポリシー」だとされている。同システムは、すでにFORTUNE誌のベスト100企業のうちの70社以上が採用しているとのことだが、このような要件は、今後さらに多くの企業で求められることになってくるだろう。

そのような状況を見越し、同社はシリコンバレーに拠点を置くHitachi Data Systemsを核として今後もストレージ事業の強化と拡大を図る。