Adobe Illustrator CS5に搭載された新機能は、他のCS5アプリケーションに比べるとそれほど多い数ではない。しかし、これまでベクターツールが実現してきた機能をさらにブラッシュアップし、ユーザーにとって本当に使いやすく、実用に値するものに絞られている。

とくにブラシ機能は大きく拡充。絵筆ブラシを使えば絵筆特有の筆部分の毛の長さや密度、太さ、固さといった設定を行うことで面相筆や丸筆、平筆の仕上がりを再現できる。アートブラシやパターンブラシもより使いやすくなり、イラスト作成では大きく表現の幅が広がるはずだ。

というわけで、第1回の復習も兼ねてAdobe Illustrator CS5の主な新機能を紹介していこう。

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日常的な作業をピンポイントで改善するお助けツール

Adobe Illustrator CS4で搭載された「複数のアートボード」機能。ひとつのドキュメントにアートボードを好きな数だけ作れるのは便利な機能だったが、アートボードの数が増えると管理も編集も大変で、便利に使えるインターフェイスとは言い難かった。

Adobe Illustrator CS5では、「アートボードパネル」と「アートボードツール」が加わり、この悩みを解消している。「アートボードパネル」ではドキュメント中に作成されたアートボードがすべてリスト表示され、作成や移動、削除が行えるほか、各アートボードのサイズや名称までも変更できる。「アートボードツール」でも同様の作業が行え、直接目的のアートボードを選択することができる。

複数のアートボードを管理するため搭載された「アートボードパネル」。サブメニューではアートボードの作成や削除などが行える

ツールバーに加わった「アートボードツール」を選択すると、コントロールパネルにアートボードのオプションが表示される。ここで、アートボードの名称を変更したり、ドキュメント中の位置を変えることができる

新しい「線幅ツール」もユニークだ。これはペンツールで描いたベジェ曲線の好きな場所にハンドルを追加し、その部分だけ線幅に強弱を付けることができる。曲線の一部を太くして遠近感を付けたり、これまでベジェ曲線の編集を行うために「パスのアウトライン」を実行していたケースはこれで軽減されるだろう。もちろん、線幅を変更してもパスは残っているので、選択ツールなどで再編集を施しても線幅の編集結果も合わせて反映される。

「線幅:30pt」で描画された線。カーブ部分だけを太くしたい場合、これまでは「パスのアウトライン」を実行し、アンカーポイントを追加しながらベジェ曲線を編集する必要があった

ツールバーに加わった「線幅ツール」を選択し、カーブ部分をクリックして外側にドラッグすると、中心のパスを軸にして線幅が太くなる。Option(またはAlt)キーを併用して、線幅を非対称にすることもできる

そして、これまで融通の利かなかった「矢印」と「破線」の作成もようやく改善された。「線パネル」に矢印に関連する機能が加わり、38種類の矢印から倍率を指定した自由度の高い矢印を作ることができる。「破線」機能もこれまでのように角部分の処理で破線の線分と間隔が中途半端な結果にならず、指定した線分と間隔を考慮し、自動的に体裁を整えたコーナー処理が行われる。

「矢印」機能が「線パネル」に加わり、先端と終端の矢印の種類や倍率、先端位置を指定できるようになった。「線パネル」の下部分にある「プロファイル」を指定すれば線幅の設定を簡単に変更できる

「破線」の設定には、新たに2つのオプションが加わった。右側のボタンをクリックすると線分と間隔を自動的に調整し、コーナー部分の正確な処理を優先して破線を適用する