NTTデータは顧客の課題から逃げない
小川氏は、NTTデータの最大の特徴を「逃げないこと」という言葉で表現する。
「最後までやり遂げる信頼感、安心感。そして大規模プロジェクトで培ったノウハウを生かし、ITグランドデザイン全体を提案できる力をSAPビジネにも展開している。SAPソリューションの大規模案件で多くの実績を持っているのは、こうしたNTTデータの基本姿勢がベースにある」
これが、小川氏が語る「顧客軸」ということになる。
「当社が求めるSAPコンサルタントは、SAPの技術的な特徴や目指す方向性を理解することはもちろん、NTTデータの方向性とベクトルを合わせたうえでビジネスができなくてはならない。だが、ここまでの仕事はパッケージSEの領域。さらに顧客が持つ課題を知り、業務変革に向けた提案を行い、最後まで顧客から逃げずに課題解決という成果につなげるところに、当社のSAPコンサルタントとしての役割がある」(小川氏)
一方、安藤氏は次のように語る。 「コンサルタントは顧客の課題の本質を見抜けとよく言われる。だが、NTTデータが追求しているのは、本質を見抜いた上でプラスバリューの解決策を提案すること。SAPコンサルタントとしての洞察力、知識、経験を用い、解決策のフレームワークを構築できる力が必要とされる。NTTデータは、国内における大規模プロジェクトの経験や、アイテリジェンスが持つグローバルの実績に裏付けられた、解決策を提案、実行するための手段がすでに整っている。これらを活用できる人材をもっと増やしていきたい」
顧客軸とソリューション軸の融合が今後の課題
あえて、NTTデータにおけるSAPビジネスの課題を挙げるとすれば、「顧客軸」と「ソリューション軸」の融合。そして、それによるビジネスの進化と言えよう。
アイテリジェンスのビジネスモデルは、欧米型のドライなものだ。欧米ではむしろこの手法が良しされる。ここに、NTTデータが持つ顧客軸をベースとした日本的な手法をどう融合させるかが、これからのポイントとなろう。
「味噌と醤油をどれぐらい足していくか」――小川氏はこんな比喩を用いる。「日本とグローバルの特性を理解して双方の橋渡しをする人材を早急に育成し、融合を促進していかなくてはならない」
そして、欧米型のドライな手法を日本の中堅・中小企業向けビジネスに持ち込むことも、顧客軸とソリューション軸の融合の1つだ。
「中堅・中小企業では必要なものだけを構築したいという要望も多い。ここに欧米型手法を展開することで、短期間かつ低コストでSAPソリューションを導入できるようになる。だが、NTTデータが提供するSAPシステムには顧客軸の考え方を持ち込むという姿勢は変えない」(安藤氏)
アイテリジェンスのグローバルにおける導入事例を国内で紹介しつつ、「味噌と醤油」を練り込んだ提案をどのように行っていくかが、中堅・中小向けビジネスのカギになりそうだ。
SAPビジネスの変化の兆し - クラウド、パートナーとの関係強化
安藤氏は「SAPの導入の手法が変化する時期に差し掛かっている」と指摘する。
「従来のSAPシステムの提案は導入規模が大きくなりすぎて、導入までのハードルが高いという傾向があった。そのため、投資を確保することと投資対効果を推し量ることに多くの労力が割かれていた。しかし、クラウドやSaaSの活用によって導入のハードルを下げることができ、ビジネスの発展や利益創出など導入後の成果に知恵、時間、コストを使える時代がやってきた」
つまり、スピード感を持ったシステム構築が可能になりつつあるというわけだ。これは「中堅・中小企業のSAP導入においても追い風になる」と同氏は語る。
また小川氏は、「大手企業では、SAP導入後の課題に直面している例が目立つ。システムの肥大化に伴って、目的としていた成果が出にくいという声も聞く」と指摘する。同社としては、そうした課題に対し、支援を行って改革に一歩踏み出す手伝いをしていきたいという。
だがその一方で、同氏はこうも語る。「SAPも自らビジネスの手法を変えようとしている。特に、パートナーやユーザーとの関係を強化しようとしている点は評価したい。NTTデータが持つノウハウと経験をSAPソリューションの提案につなげることで、両社の協業関係をさらに深めることができるのではないか」
SAPとのパートナーシップの強化もまた、NTTデータのSAPビジネスを進化させることになりそうだ。