Gore氏は米オーランドから、元副大統領らしいメリハリのあるスピーチを送った。フォーカスはずばり、環境問題だ。
「人間と地球のエコシステム、この2つの関係が変化している」とGore氏は切り出す。「これまで経験したことがないので認識し難いが、致命的なことになる」(Gore氏)
Gore氏は、具体的に
- 人口爆発
- 科学/技術革命
- 地球温暖化
の3つを挙げる。
科学/技術革命はわれわれの生活の質を改善したが、予期しない副作用ももたらした。革命の原動力となった炭素。151年前に米ペンシルバニアで最初の油井が掘削され、その後世界経済の燃料源となった。奇しくもちょうど同時期、アイルランドの学者、John Tyndall氏はCO2が赤外吸収することを発見する。科学者らは、CO2の"毛布"は適度であればバランスが取れるが、厚くなると温暖化を引き起こすとする論を導き出す。それから約150年後、温暖化の進行は明らかだ。「北極の氷は溶けており、ここ数十年で30%がなくなったといわれている。これは新しいパターンを生み出している」とGore氏、温度や湿度の変化により、これまでなら数百年に1度だった大規模な洪水やハリケーンが頻繁に発生している。「科学者の予言どおりになっている」(Gore氏)わけだ。
温暖化はインパクトが分散していて知覚しにくい。「原因と結果のリンクが長いので、取り組む時間が残っていると錯覚させる。だがわれわれが推理力を使って事実と脅威を伝え、コンセンサスを作る必要がある」とGore氏は喚起する。
ここで、企業は大きな役割を果たすことができるとGore氏は見る。「持続性(サステナビリティ)は、環境という観点だけではなく、従業員、その家族、株主などの関係者、コミュニティなども関係する。持続的に収益のある企業は、長期的に生き残ることができる企業だ」 - サイクルが短くなり短期的なパフォーマンスに視線が向きがちな資本市場にあって、持続性にフォーカスすべき理由について、Gore氏は次のように語る。「汚染は(何の利益も生まない)廃棄物だ。汚染することなく製品やサービスを提供できるのであれば、そうすべきだ。CO2は視覚、聴覚、嗅覚に訴えず、値段もない。だから気にならない」、だが「高度なソフトウェアを使って可視化し、測定し、削減につなげなければならない」とITへの期待も語る。そして、「容易だが間違った道ではなく、困難でも正しい道を選ぶ必要がある」と戒めた。
そうした上で、Gore氏は別の理由も挙げる。「グリーンはよいメッセージであり、顧客もそれを求めている」。企業のブランドやイメージ強化となり、優秀なスタッフを採用/維持する上でも有効だという。このほか、世界各国で進みつつある規制化も理由に挙げた。
「われわれには大きな責任がある」とGore氏。次の世代がわれわれの世代を振り返ったときになんというだろうか。"どうして何もしなかったの?"と非難されるかもしれない。だが、スマートグリッドなどのイノベーション、ハイブリッドや再生可能エネルギーなどの利用が進み、地球がクリーンになれば、絶対に無理といわれていた問題を解決できる勇気や知恵を称賛されることだろう、と述べスピーチを締めくくった。