エンタープライズ分野に大きな波を作りたい
シトリックスの木村副社長は、今回の基調講演の冒頭で「エンタープライズ分野に大きな波を作りたい」と語った。これは、昨今叫ばれている日本の国際競争力低下や円高トレンド、総人口(とりわけ就業可能人口)の減少など、企業をとりまく環境は大きく変化しているものの、「ITの効率化の部分はこのような外的要因に左右されない」(同氏)という考えがもとになる。これまでにも高度経済成長期にはメインフレーム(ホストコンピュータ)、バブル期はクライアント/サーバシステム(ダウンサイジング)といったように、ITが何らかの形で企業を支えてきたという事実を踏まえ、同氏は「今後はITを経営に取り込んでいくことが重要」という考えを示した。
現在の企業におけるIT環境は、「セキュリティ」「運用コスト」「柔軟性」「モビリティ」「継続性」「グリーンIT」など様々な課題を抱えているが、経営的な観点からの「攻め」と「守り」の両面においてITは重要な役割を果たす。
木村氏は、このような問題を解決する「次の時代のIT」の1つの要素が仮想化技術だとしている。同氏は、「現在の"クラウド"はすべて仮想化技術の上に成り立っている」と語っているが、その意味において「サーバやアプリケーション、ネットワークに関する仮想化は一巡した」という見解を示している。その「次」に大きな波としてやってくるのが「デスクトップの仮想化」だという。
ワークスタイルの変革「work.shift」
木村氏は、ITによるワークスタイルの変革に関する同社のビジョン「work.(ドット)shift」という考え方をあらためて示した。
実践的な具体例として同氏は、「モビリティを徹底追求した」とされる、米エモリー大学の臨床機関「EMORY HEALTHCARE」における1万人規模でのデスクトップ仮想化事例を動画で紹介。本当の意味で「いつでもどこでも誰でも安心して使えるIT」が求められるようになった、ITの役割の変化について言及。さらに、「どこでも」が宇宙にまで広がっているという事実を踏まえながら、「変化」を支えるという意味で、仮想化技術が「第3のIT革命をもたらす」とした。
最後に同氏は、「ITが日本経済を支える基礎になってほしい」という願いを訴え、基調講演を締めくくった。