デザインのアウトプット先を選ばないワークフローが実現する?
Adobe Creative Suite 5の各パッケージに共通するキーワードが「メディアの違いを超えたプラットフォームの実現」だ。これまでDesign Premiumでは、アウトプットフォーマットとしてPDFファイルが大きく取り上げられてきたが、Adobe Creative Suite 5では、さらにFlash技術も加わりWebやインタラクティブメディア、携帯デバイスなど紙以外の媒体も強く意識した新機能が搭載されている。
過去にアドビ社にインタビューした際、同社は「デザイナーは最新メディアへの対応を迫られているが、勝手の違うソフトウェアの操作習得とメディア固有のルールに四苦八苦している」とクリエイティブ現場の現状を分析していた。同時に、それぞれのメディアに精通するプロフェッショナル同士が会話しようとしても共通言語がなく、デザイン部門とコーディング部門で意思疎通が難しいことも問題になっている。
Adobe Creative Suite 5では、新メディア向けの機能やファイルフォーマットを使い慣れたアプリケーションに搭載することで、新機能のみを理解すれば異なるメディアへチャレンジできるようになっている。Adobe Creative Suite 5 Design Premiumに収録されるアプリケーションから、まずはこうした新メディアへの対応に注目して紹介していこう。
●Adobe Bridge CS5
レイアウトデザインに必要なアセット(素材)すべてを管理できるAdobe Bridge CS5では、ファイル管理機能がさらに充実。InDesignドキュメントのリンクファイルを直接ブラウズできるようになり、InDesign CS5とPhotoshop CS5でカスタマイズ可能な「Adobe Mini Bridge」も新たに搭載された。さらに、ファイル名の変更に便利なプリセット機能やフォルダ間のファイル移動を簡単にするパスバーなど、従来機能の強化・改良が成されている。
●Adobe Photoshop CS5 Extended
レタッチに関する新機能で目立つのは、「Corel Painter」のようなデジタルペイント機能や、被写体(コンテンツ)の内容に応じて塗りつぶしを行うインテリジェンスなもの。タブレットと併用すれば、ドローイングソフトのような描画感と高度なレタッチ技術を簡単に実現できるに違いない。そして、3Dロゴやアートワークの作成機能が搭載され、従来からの3DCG機能がされに強化されている。
●Adobe Illustrator CS5
透視図グリッドによって遠近感のあるシェイプやオブジェクトを作成可能。Adobe Illustratorで作成したデータはAdobe Flash Catarystに取り込んでインタラクティブなコンテンツをコーディングせず作成できる。また、ドロップシャドウやテクスチャは解像度に依存しないため、ひとつのデータを異なるメディアに展開する際に、データ変換を行わず活用できる。
●Adobe InDesign CS5
まず大きなニュースは、Adobe InDesign CS5にアニメーションやビデオ(動画)といった印刷物制作には関係のない素材をそのまま配置できるようになったこと。以前からAdobe Flash Professionalへの書き出しはサポートされていたが、Adobe InDesign CS5ではより高精度な変換結果が得られるという。そして、画像のメタデータから自動的にキャプションを生成できる「ライブキャプション」機能やテキストの変更履歴をトラッキングする校正作業に役立つ機能など、出版関係者に便利なものも多く搭載された。
●Adobe Flash Catalyst CS5
2009年6月からパブリックβが公開されていた新しいアプリケーション。Adobe Creative Suite CS5になって、Design Premiumにも収録された。デザイナーが扱いにくいFlashコンテンツ作成時のコーディングを習得せずにインタラクティブなコンテンツを作成できるインタラクションデザインツールで、PhotoshopやIllustratorで作成したアートワークをAdobe Flash Catalystで編集し、SWFファイルとしてパブリッシュ・配信できる。もちろん、デベロッパーはこのSWFファイルをさらにリッチな紺鉄に仕上げたり、Flash Builderにインポートしてサーバーやサービスに追加することも可能だ。デザイナーとデベロッパーがコミュニケーションを取る上での架け橋的なアプリケーションとしても活用が期待される。
エディトリアルデザインをWebや電子出版に転用する動きは、これからさらに大きくなるに違いない。その際、使い慣れたAdobe InDesignというプラットフォームをそのまま活用できるのは、デザイナーにとって大きなメリットとなる。デザイナー自身のイメージを他メディアの制作者に伝える際にも、より実践的な内容を伴う形でプレゼンテーションできるだろう。
次ページでは、CS4との相違点に着目する。