軸足を社会イノベーション事業へシフト

社会イノベーション事業への注力を進める一方、同社はポートフォリオの見直しを進めている。特に利益率の低いコンシューマ分野から強化施策を進める社会イノベーション事業へのシフトすることを前提とした再編を進めており、「すでに売り上げ規模の3割相当の見直しを図った」(同)とする。

ポートフォリオの見直しにより、コモディティなコンシューマ向けPCやPDP工場の譲渡、半導体メーカーの統合などが進められてきた

また、設備・戦略投資として、3年間で予定されている総額1兆4,000億円の内、約7割となる1兆円程度を社会イノベーション事業として火力や原子力などの発電システム、データセンター事業、鉄道の英国での製造、保守機能の強化などに投じる計画とするほか、「M&Aを積極的に行っていくことで、さらなる事業強化を図る」(同)としている。

社会イノベーション事業への集中投資を行うことで、さらなる成長を狙う

さらに、研究開発投資も3年総額1兆2,000億円の内、約半分となる6,000億円を社会イノベーション事業に投入。世界の各地域に応じた研究開発体制(例えば北米ではストレージシステム、中国ではスマートグリッド)を構築するほか、社会インフラ向け情報基盤の開発やパワー半導体やリチウムイオン電池などのエレクトロニクス関連研究の推進、そしてスーパーコンピュータの増強による解析技術の強化を図っていく。

社会イノベーション事業関連への研究開発費の割合を高く配分し、それぞれの地域に応じた研究開発を進める

加えて、社会イノベーション事業を支えるであろう各子会社(日立金属、日立電線、日立化成など)の先端技術に対しても注力することで、差別化要因を確保していきたいとする。

一方、縮小化を進めるコモディティ製品については、「例えばFPDに関してはパネルの製造と海外向けテレビの自社生産を終了、OEMなどを活用した展開へと移行した」(同)とするほか、自動車機器関連については原価低減や拠点の再編、人員削減と平行したハイブリッド自動車や電気自動車への対応とエンジンの高効率化、HDD事業のSSD市場や外付けHDDなどの新市場への追求を図ることによる黒字化の維持を図っていくとした。

これまで事業改善が課題とされてきた各事業についても改善のめどが立ってきた

このほか、集中購買比率やグローバル調達比率の拡大や新興国からの調達を進めることに加え、省資源化などを図り、それに併せて固定費削減を継続して進めていくことで、収益性の改善と財務体質の強化を図り、資産の健全化や連結納税なども活用することで純利益2,000億円台の安定的確保を狙っていくほか、株主資本の強化、有利子負債の削減、フリーキャッシュフロー黒字継続などをの財務体質強化を図っていく。

日立の経営基盤強化策各種。これらを推進していくことで、目標の売上高と純利益を確保する

高い営業利益率を見込む社会イノベーション事業

こうした施策を進めていくことで、2012年度の売上高10兆5,000億円、純利益2,000億円台を狙うが、その達成のための核となるのがそれぞれの事業の営業利益となる。中期経営計画による2012年度の営業利益は全社平均で5%超、社会イノベーション事業のみを見れば7%となっている。「2012年度では、社会イノベーション事業の多くが高い利益を出す状況になっているが、2015年度にはこれがさらに多くの利益を生み出す流れになっている」(同)と意気込みを見せる。

また、これまでの成果としての事業構造改革費用の減少や、ルネサス エレクトロニクスの誕生による持分法損益の改善、上場5社の完全子会社化による非支配分帰属利益の流出減少などが図れることから、「2012年度には最終利益を出せる体質へと変貌できる」(同)との見方を示し、「守りから攻めに転じ、グローバルで融合や環境を核に戦う体制を構築することで、次の日立の100年に向けた戦える集団へと生まれ変わる」(同)ことが強調された。