「アメーバピグ」の制作に使われたアドビ「Flash Builder」

続いてはアドビが発売するFlash Builderのスペシャリストとして浦野大輔氏(サイバーエージェント)が登場。浦野氏はアバターとチャット、ゲームが楽しめるWebサービス「アメーバピグ」の開発リーダーを担当している人物。浦野氏がFlash Builderを使う理由として挙げたのは、チーム開発の行ないやすさ。アメーバピグはサイバーエージェント社内でFlash担当6名で開発を行なっている。メンバーの開発環境はすべてFlash Builderだが、OSやツールのバージョンは異なる。しかし浦野氏は「なにも問題なく使えている」と語る。会場では実際のコードを公開し、アメーバピグの制作環境を紹介した。社内でチェックを行なうためにツールの開発も行なっている。紹介されたツールは、ユーザー名を指定すると、その人のアバターを確認できるツール。会場ではAKB48の前田敦子のアバターを見せていた。

そして、浦野氏はFlash Builderのカスタマイズについても言及。自身も使っている便利なプラグインを紹介した。「SourseMate」はFDTと同じようにコードを形成してくれるプラグイン。デフォルトでは付いてこないので大変重宝しているそうだ。もうひとつの「Subversive」は、バージョン管理システム(SVN)のプラグイン。チーム開発の大規模プロジェクトには必須とのこと。

最後に浦野氏は、今後のFlash Builderについてふたつの要望を挙げた。ひとつめはMac版での不具合。現状だとASプロジェクトでプロファイルを使うと、動作が不安定になるそうだ。もうひとつは、入力支援機能の強化。「松竹さんのデモを見て『FDT』のQuickFixがほしくなった……」と、かなり羨ましそうだった。

「Flash Builder 4」と「FlashDevelop」の特徴を挙げて紹介

会員数300万人のWebサービス「アメーバピグ」を使って開発環境を紹介した

これが実際の制作画面。大規模なプロジェクトなのでたくさんのサブモジュールで構成されているそうだ

社内で使用するためのツールも開発。ユーザーのアバターを確認できる。写真はAKB48の前田敦子

無料なのに激速のエディター「FlashDevelop」

最後に登場したのはFlashDevelopを担当する佐藤陽亮氏(Nifty/FlashDevelop.jp/Blog 馬鹿全)。仕事ではNiftyとスクウェア・エニックスが共同運営するアバターチャットサービス「Nicotto Town-ニコッとタウン-」を行なっている。

佐藤氏は「『FlashDevelop』の魅力は動作が軽快なところ。3年間使っていて一度たりとも重いと感じたことはない」と語る。エディターはレスポンスが悪いと作業効率が下がってしまう。しかしこのツールは起動からコード補完に至るまで快適に動作するそうだ。 実際に会場ではデモンストレーションを行なったが、あまりにも速すぎてスクリーンでなにが起こったのかわからないことも。司会のトミー氏が「速すぎてわからない。もう一度やってください」とリクエストするシーンが何度かあったほど。

フリーソフトであるというのもFlashDevelopのポイントだ。ActiveScriptに興味を持った人が気軽に始められる環境が整っているのは初心者にとってうれしい。佐藤氏は「ActiveScriptの入り口になってほしい。ここから『Flash Builder』に移るのもいいし、そのまま『FlashDevelop』を使い続けてくれてもいいと思う」とコメントした。

この他のセールスポイントとして、バージョン「3.1.0」から完全日本語対応になったことや、入力支援を行なうコードアシスト機能、オープンソースなのでプラグインを拡張できる発展性などを紹介した。次期バージョンの「3.2」あたりから、デバッガーの機能も実装されそうだと今後の展開も報告した。

佐藤氏が携わった仕事のひとつ「ニコッとタウン」

軽快さを特徴のひとつに挙げただけあって、「FlashDeverlp」の動きは非常にスムーズだった

どれが一番優れたエディターなのか

セミナーの最後は司会のトミー氏と、各ツール担当の3名による座談会。どのツールがもっとも優れているかを決めるトークバトルだ。ところがTwitterと来場者から質問事項を募集すると、「お互いを褒め合う」とのお題が出された。

FDTの松竹氏は、「Twitterを見ていると他のエディターは敵と思われがちだけど、そんなことはない。『Flash Builder』は機能が豊富。海外では『FDT』と『Flash Builder』を両方インストールしている人もいる。それぞれのいい部分を使えばいいと思う」と語った。これを受けてFlashDevelopの佐藤氏は、「デモを見て思ったのですが 『FDT』のQuickFixと『Flash Builder』のデバッガーは強力ですよね。なんとかして手に入れたい……」と褒めた。いい機能をどんどん取り入れることができるオープンソースエディターなので、いつの日かFlashDevelopにも、それらの機能が実装されるかもしれない。Flash Builderの浦野氏は、「実は社内のスタッフにも『FDT』の推進派がいる。仕事で共存させられるか実験してみたい。『FlashDevelop』は無料なのがいい。こちらも社内の教育目的用として使っている」と締めくくった。

今回のセミナーでは、3つのFlashエディターの特徴がわかりやすく紹介された。これからFlashを始めたい人はもちろん、他のエディターに乗り換えたいと思っている開発者にとって有益な時間となっただろう。作るコンテンツは同じでも、多くのエディターが存在するFlashならではの活気溢れるイベントだった。