Webアプリの「見つからない、儲からない」問題を専用ストアで克服
アプリケーションプラットフォームとしてWebアプリは着実に成長している。主要なWebブラウザにおいて、マルチメディア、ハードウエアアクセラレーション、ローカルストレージ利用、ジオロケーションなど、デスクトップソフトと同等の機能や利用体験を可能にするWeb APIのサポートが整いつつある。その結果、例えばGoogleは4月に、Gmailにファイルのドラッグ&ドロップ添付機能を追加した。いまやデスクトップソフトがこなせることをWebアプリができる/できないではなく、いかに実現するかだけをWebアプリ開発者は考える時期にある。
1年前の主要ブラウザのWeb API(左からビデオ、カメラ、SVG、WebGL、ジオロケーション、ワーカー、Webソケット、Webストレージ)サポート状況 |
今年末にはInternet Explorer以外のすべて主要ブラウザが完全サポートを達成する見通し |
プロダクトマネージメント担当バイスプレジデントのSundar Pichai氏は、まずデスクトップアプリでできることはWebアプリでもできるのを示す必要があるとした |
MugTugのCharles Pritchard氏が画像編集WebアプリDarkroomのオフライン機能を披露 |
Webアプリの繁栄を促すエコシステム作りも不可欠になる。優れたWebアプリが登場しても、ユーザーの目にとまらなければ利用してもらえない。「Web上に優れたチェスゲームはたくさんある。残念ながら、それらを見つけるのは難しく、本当に優れたものを1つ選び出すのはさらに難しい。Webアプリ用のレーティングやレビューがなく、何人ぐらいがダウンロードしたというようなデータも見あたらないからだ」とPichai氏。そこでGoogleは、ユーザーがWebアプリを"発見"できるように「Chrome Web Store」を用意する。無料/有料Webアプリのワンストップショップであり、Webアプリ探しから購入・導入まで一貫してサポートする。同時にこれは開発者に対して、Webアプリから収益を上げる新たな道すじを切り開く存在になる。
基調講演ではゲームのほか、Sports Illustrated誌の編集者Terry McDonell氏が以下のような電子雑誌のデモを行った。映画「フィールド・オブ・ドリームス」の台詞「それを作れば、彼らが来る」をもじって、「オープンできちんと編集して、検索可能にし、ソーシャルなものを作れば、われわれは有料にできる」と述べた……。
Chrome Web Storeは年内オープンを目指しており、今年後半に登場する予定のChrome OSデバイスにアプリケーションを追加する方法になると考えられる。ただしChromeおよびChrome OS向けではあるものの排他的ではないという。スマートフォン/ 多機能携帯向けのアプリストアでは、アプリをすぐに入手でき、常に最新版にアップデートされる。それを体験すると、パッケージによるソフトウエア提供が時代遅れに思えてくる。Chrome/ Chrome OSとChrome Web Storeの組み合わせは、そうした流れをPCを含むあらゆるデバイスに広げる担う狙いがありそうだ。
1年前とは違う! 飛躍的な高速・安定化を実現した「Wave」
基調講演の最後に、Google Wave担当マネージャーのLars Ramsussen氏が登場した。Waveは昨年のGoogle I/Oで、HTML5世代の技術を活用したコミュニケーション/コラボレーション・ツールとして突如発表された。それから開発者を対象に招待制のベータテストが始まり、一般ユーザーにもテストが拡大された。当初は「遅い」「不安定」という悪評が目立ったものの、ベータ開始時に20%だったクラッシュ率が今では0.1%に減少。アプリを開く時間も6秒から2秒に短縮した。改良が進むに従い、Waveを本格的に取り入れる教育機関やビジネスが増加し始めたという。
1年が経過し、Ramsussen氏はWaveの一般公開を発表した。これはWaveチームとベータテスターの過去1年間の成果であり、同時にHTML5世代の機能が実用的になってきた証しとも言える。