なお、同社ではこうした方針に基づいた、2012年度までの中期経営計画の概要も公開している。これによると、すでに公開済みの2010年度の業績(売上高7兆円、営業利益2,500億円)に加え、2011年度は売上高7兆5,000億円、利行利益3,500億円、そして2012年度には売上高8兆円、営業利益4,500億円となっており、「2009年から2012年までの世界のGDPのCAGRは5.8%だが、我々の売上高のCAGRは7.8%となっており、当然、伸びるマーケットに進出しないといけない。2012年度の数値は新興国の伸びに期待して計画している」と、海外比率、特に新興国の比率を増やしていくことを強調する。

海外売上高比率を2012年度には63%へ拡大。この内およそ半分の31%を振興国が占めることとなる

これにより、営業利益のみならず、2012年度末には株主資本比率は2009年度末の15%から20%へ、D/Eレシオは同153%から80%以下へ、そしてROIは同5%から20%へと、強固は財務体質への転換を果たすことが可能となるという。

2012年度の経営指標

また、事業グループ別に見ると、2012年度の売上高と営業利益率はデジタルプロダクツが3兆円で2.0%(2009年度から2012年度のCAGRは8.3%)、電子デバイスが1兆6,500億円で10.9%(同8.0%)、社会インフラが3兆1,100億円で6.8%(同10.5%)、家庭電器が6,400億円で1.6%(同3.3%)となっている。

事業グループ別の各年度の売上高見通し

デジタルプロダクツ事業については、新興国のPCおよびTVの売り上げ比率30%以上を台数ベースで狙う。そのために2010年度としても双方合計で約40モデルの販売を計画するという。

デジタルプロダクツ事業の事業計画

電子デバイス事業はNAND型フラッシュメモリの事業規模拡大はもちろんのこと、ディスクリートのパワー半導体への注力やシステムLSIの注力製品分野における収益力の強化、LCDの裸眼式高精細3Dディスプレイなどの事業化加速などを掲げる。特にディスクリートは200mmウェハへの転換を進め、製造能力の倍増を狙うほか、高効率電源用SJ-MOSFETの売上高を2012年度で2009年度比で6倍に増やすことを目指す。

電子デバイス事業の事業計画

また、社会インフラ事業は、海外の製造体制の強化を推し進めるほか、発電技術や送変電技術、産業用モーター、鉄道用電気部品などの環境技術もグローバルに押し進めることで、世界市場への拡大を図っていくとする。

社会インフラ事業の事業計画

そして家庭電器事業は、「キーワードは省エネと快適。この2つの側面でNo.1を目指す」(同)ということで、国内での技術力を押し出したNo.1商品の創出に加え、海外での現地密着型の機種の設計や開発体制の拡充を図るとのことで、2010年度には冷蔵庫および洗濯機の新興国向け商品を約40モデル販売する計画とする。

家庭電器事業の事業計画

なお、設備投資や研究開発費については「新規・成長事業への重点投資を行うことで、構造転換の加速を図る」(同)としており、設備投資および投融資が2010~2012年度の累計で1兆3,000億円、研究開発費が同3年間で1兆700億円を計画。ストレージ関連の増産や半導体の新工場、2次電池の増産、電力システムの増産、LEDの開発や製造自動化などの分野に向け「メリハリをつけた投資をしていきたい」(同)との意気込みを見せた。

2010年度~2012年度の3年間における設備投資・投融資費用および研究開発費用