Flash Builder 4における3つのテーマ
Flash Builder 4は従来のバージョンでは「Adobe Flex Builder」という名称だった製品であり、今回のリリースから「Flex」ではなく「Flash」の名を冠するようになった。
Flash Builder 4は以下の3つのテーマを持ったリリースになっているという。
- 生産性の向上
- データ中心型開発(DCD)のサポート
- デザイン/開発フローの改善
生産性については、コーディング支援やデバッグ機能の強化、テストフレームワーク「Flex Unit 4」の統合など、アプリケーション開発の期間短縮をサポートする機能が追加されている。新たに追加されたコマンドラインビルド機能は、スケジューリングされたビルドの実行を可能にし、ビルドサイクルの最適化を実現する。また標準でネットワークモニタが搭載されるようになり、Flexアプリケーションとバックエンドの間で受け渡しされるデータの監視に、別のツールを使用する必要がなくなっている。
データ中心型開発というのは、既存のデータを元に、それを適切に利用する形でアプリケーション開発を行う方式を指す。Flash Builder 4では、データベースや既存のアプリケーション、Webサービスなどから取得したデータと、ユーザーインタフェースとのデータ連携を、ウィザード形式で容易に行うことができるようになっている。
「Flexを使ったアプリケーションでは、すでに何らかのデータがある状態での開発になるケースがよく見られます。たとえばバックグラウンドでJavaやPHP、あるいはAdobe ColdFusion、外部のSOAPサーバなどからデータを取得し、それを使ってアプリケーションを作るといった具合です。これらのバックグラウンドのデータに接続する方法が非常に容易になっているのがFlash Builder 4です」(Mike Potter氏)
Flex 4でもテーマに挙げられたデザインから開発までのワークフローの改善は、Flash Builder 4でも重視されている。具体的にはFlash Catalystとの連携機能が搭載され、CS5で作成したコンテンツをCatalystを使ってユーザーインタフェースに変換し、それをFlash Builderにインポートすることができるようになっているという。
ところで、今回のリリースで「Flex Builder」からあえて「Flash Builder」という名前に変更したのはなぜだろうか。これについて、Potter氏は次のように説明してくれた。
「Flexはオープンソースのフレームワークであり、Flash BuilderはFlexやFlashを効果的に活用するためのAdobeのプロダクトです。AdobeのFlashプラットフォームの中で両者が持つ役割を明確にした上で、Flexという独立したブランドをきちんと確立させていこうと考えた結果、Flex Builderの名称から『Flex』の単語を抜いて、新たにFlash Builderとしました」
実はこの名称変更は、Sparkコンポーネントモデルの採用をはじめとするデザイン面のサポート強化とも深く関わっている。デザイナとデベロッパを結びつけるという点では、同社は「Adobe Flash Catalyst」などのツールも発表しているが、このCatalystでもFlex 4をサポートする。このように複数のツールでFlexをサポートするためにはコンポーネントモデルの改善は不可欠であり、またFlexがFlash Builder専用のフレームワークでないことを強調する意味から、名称変更が必要だったということだ。
新ツールの導入/移行をどうサポートするか
Potter氏によれば、Flex 4やFlash Builder 4では従来のバージョンとの互換性が図られているため、新バージョンに移行しても既存のコードを書き換える必要はないという。たとえばFlash Builder 4でもFlex 3のコードを問題なく使うことができる。しかしSparkコンポーネントを始めとした、今後不可欠になるであろう新フィーチャーが追加されているため、将来的には新しいコードに移行してほしいと同氏は言う。
そのためにAdobeでは、「Adobe Development Connection」などを通じて、新バージョンへの移行方法などの情報提供を積極的に行っている。また、ツール内でも新しいコンポーネントをハイライト表示するなどの配慮が施されているという。
では、新しいユーザ獲得のためには今後どんなアピールを行っていくのか。Potter氏は次のように答えてくれた。
「Adobeが最先端の開発ツールの会社というイメージはすでに広く根付いくれていると思います。現に多くの開発者がFlashプラットフォームやFlexを使ってくれています。ですからさらに多くの開発者の注目を集めるためには、Adobeのツールを使って実際にどんなものが作られてきたのかを強くアピールすることが大事だと考えています。実際に大企業の業務でもFlexが広く使われているという事実を知ってもらいたいと思います」