欧米の開発を担うインドに次世代のリーダーを送り込む
開発の効率化やコスト削減を実現する方法に「オフショア開発」がある。日本企業が開発を委託する先の多くはアジア諸国のベンダーで、自社で管理する子会社を現地に設立して労働者だけを現地調達しているという例も多い。
オフショア開発は欧米でも盛んに活用されており、システムの最先端に触れているオフショア事業者も多い。そこに目をつけたのがNTTコムウェアだ。
「CMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)を取得している企業の3分の2はインドの企業で、インドは欧米の開発を一手に担っています。インドの開発力の高さには注目していました」と、基盤技術本部 業務推進部の下平博巳氏は語る。
研修の目的は次世代リーダーの育成だ。体系的なITマネジメントの習得、耐性・精神面の強化、グローバルな視野の獲得などを目的として、経験を積んだ中堅社員を対象に募集が行われた。「現地でのコミュニケーションは英語ですから、選考にあたってTOEICの基準点はありました。しかし、TOEICの基準に達しているかどうかよりも熱意が優先でしたね」と下平氏。
CMMIの学習や異文化理解といった学習研修のほか、実際にプロジェクトに参加して開発に携わるOJTも4週間含まれる研修の総日程は8週間。研修会社を通さない、手作りの研修には初回である2009年2月に8名が、2回目となる10月に14名が参加した。
念入りなシミュレーションと24時間体制で万全なサポート
研修会社に委託せず、自社でオリジナルのプログラムを構築したのは、軸のぶれない研修を行うためだ。「研修会社の考えと私たちの考えが必ずしも一致するとは限りません。目的を達成するために自社でプログラムを組み立てることが最適だと考えました」と語るのは基盤技術本部 技術SE部 担当部長である松崎弘人氏だ。松崎氏と下平氏の2人が研修の事務局となり、事前準備と対応にあたった。
「研修生をインドに送り出すに際して不安だったのは治安と衛生です。過酷な環境で自ら考え、行動できる人財の育成が目的ではありますが、社員を無事に帰国させることが最優先です。そのため、事前準備は入念に行いました」と松崎氏。
両氏は研修生が利用するルートで飛行機を乗り継いで現地に入り、食事や医療の事情を詳細に調べたという。「例えば生水を飲むなと言いますが、その飲んではいけない水で洗った手で物をつかんで食べても大丈夫かどうかを実際に行って確認しました。現地で処方される薬についても、日本人が服用しても大丈夫かどうか事前に確認しました」(松崎氏)
しかしここまで入念な準備がされていながら、現地の事情が研修生にすべて公開されたわけではない。「"何を食べれば大丈夫なのか"、"体調を崩したらどうすべきか"といったことを自分で判断するのも研修です」と松崎氏。2期目以降の参加者には先輩参加者に尋ねるという選択肢もあるが、これについてもあまり教えすぎないようにと指導したという。「予防接種も情報だけを与え、受けるかどうかは本人の判断に任せました」と下平氏は語る。