香港経由での中国語検索サービス提供に踏み止まることで、Googleは中国本土への再進出の可能性を残したが、「Googleは追い出された」と見る向きもある。New Ledgerの発行人でもある投資家Francis Cianfrocca氏は、Googleの中国撤退騒動は起こるべくして起こった問題だとしている。Googleが中国市場に参入したとき、すでに中国政府は出口を用意しており、中国本土からのGoogleの撤退は「時間の問題だった」と述べている。

「中国は自由な市場競争を認めない。競争相手から市場シェアを奪い取るという(自由競争の)コンセプトは、彼ら(中国)にとって世界の秩序に反するものである。すべての産業でいくつかのプレイヤーを選び、それぞれに市場シェアを割り当てる。すべては決められた道の上なのだ。検索市場ではBaidu(百度)やAli-Babaなどが選ばれた。Googleに市場参入を認めたのは、中国企業の改善を促すためだった。中国市場にGoogleが足を踏み入れた1日目から、すべての眼は中国企業の準備が整う"時"に注がれ、Googleを追い出す口実も整えられていた。それが実行されたに過ぎない。」

欧米におけるGoogleのような一人勝ちは中国では認められない。法体制は中国政府が思うように管理できる中国企業を優先するためのものであり、またノウハウを搾り取ってから外国企業を追い出す口実にもなる。今回はGoogleが検閲問題という出口を選んだだけで、遅かれ早かれ同社は中国撤退の道を歩むことになったという。

これはGoogleだけではなく、自分たちのモラルをねじ曲げてまで中国に進出した他のすべての外国企業が直面している問題だ。例えば検閲問題に関連して「Great Firewall」と呼ばれる中国本土でWebコンテンツをフィルタリングするシステムが話題になっている。そのハードウエアや技術を提供している企業として米Ciscoの名前が挙げられ、中国政府の検閲に協力していると一部から非難されている。だが、そのCiscoもネットワークルーティング市場においてHuawei(華為)が力をつけてくれば、中国市場において今日のような役割は担えなくなるとCianfrocca氏は見る。

ただし、中国企業の独り立ちを不安視する声も出てきている。中国科学院のZhang Yunquan教授はNew York Timesの取材に対して、Googleに追いつき追いこせで進み続けてきた中国企業が目標を失い、これまでのような健全な状態で運営されなくなると指摘した。Chinalabs.comのFang Xingdong氏も、Googleという中国のWeb産業の革新性をけん引してきた存在を失ったことで、開発投資を最小限に抑えて互いに技術をコピーするばかりだった中国のインターネット企業が停滞すると見ている。

Googleは研究開発部門を中国本土に残したが、中国企業の迷走が現実になれば、Googleの置き土産が新たな扉を開くことになるかもしれない。