――では、これまでの経験からTektronixの長所と短所をどのように見ていますか。
Tektronixは、エンジニア、マーケティング、セールス、サービスなど、いずれの分野においてもイノベーションを重視している企業であり、常にイノベーションを実現していくための技術も有している。
また、Danaherの傘下になったことで、オペレーションにおけるDanaherのノウハウにより、彼らの卓越性が我々に提供されることとなったほか、継続された改善をいかに行っていくか、という考え方も強められた。それは、製造部門だけではなく、セールスなどにも当てはめられることで、さまざまな部門に波及していると思ってもらえれば幸いだ。
こうした経験の積み重ねにより、次に飛躍するための収益が伴った成長の可能性が高まってきた。それは、自立した成長もあるし、M&Aを行う場合もあるが、「Tek 2.0」として3~5年後に向けた成長シナリオとして描かれることとなる。
――今、Tek 2.0という言葉が出てきましたが、それはどういったものとなるのでしょう。
Tek 2.0には3つの要素がある。1つ目は「コアな技術の維持と革新の実現」だ。我々が言うところのコアな技術というのは、オシロスコープであり、ロジックアナライザであり、そして映像関連の計測技術である。特に映像のブロードキャストを含めてタイムドメイン関係におけるポジションは確実に死守していく。
この死守という意味は投資をして、製品ポートフォリオを拡充させ、製品間のギャップを埋めていくという意味で、2つ目の「製品ポートフォリオの拡充」というものにもつながっていく。
例えばリアルタイム・スペクトラムアナライザやハイエンド・オシロスコープなどでは、高バンド幅対応など、我々でしか提供できない技術もあり、そこを伸ばしていく方針を出している。
また、ハードウェアだけではなく、サービスの充実もポートフォリオの拡充に入っており、さまざまな企業に向けたアプリケーションの開発なども計画している。
3つ目は「カスタマサービスの充実」だ。カスタマコールセンターやサポートの強化のほか、ワールドワイドでのパートナーへのサービスやサポートの提供。加えてワールドワイドで戦略性の高いカスタマへのサポートも重視していくことを予定している。
この3つの柱を達成するためには、社内の有機的な融合、M&A、パートナーシップの強化が重要だと思っておりそれらの取り組みを強化してきた。2009年に行ったM&AやNational Instruments(NI)との協業を見てもらえれば、我々がそうしたことをいかに重視しているかを理解してもらえると思う。
これにもう1つ。投資のバランスが重要になってくると思っている。我々は中国での生産能力の拡大を進めているほか、さまざまなメーカーとの共同開発によるタイム to マーケットの短縮、パートナー企業によるセミナーやトレーニングというものも投資の中には含まれており、何をどのタイミングでやるかが重要となってくると考えている。
――今回のインタビューではカスタマサポートの強化を何度も語られてきましたが、これの意図するところは。
似たようなサポートを行っている企業は全世界で見ればあちこちにあると思う。日本では、(日本テクトロニクス代表取締役社長を務める)米山(不器)氏のリーダーシップの下、非常にサポートの強化が上手くいったと思っている。
こうしたサポートの強化に伴うカスタマへのサービス提供は、我々を新たな段階へと導いてくれると信じている。これは、企業として、カスタマに対し我々が長期的なコミットメントを示している証となるし、継続して投資を行っている証明にもなるからだ。