世界的なスマートフォンブームにより、モバイルデータへの需要が急速に高まっている。モバイルブロードバンド技術としてLTEと共に名乗りを上げているのがWiMAXだ。2009年10月、スイス・ジュネーブで、WiMAXを推進するWiMAX Forumのプレジデント兼会長のRon Resnik氏、規制作業部会でディレクターを務めるTim Hewitt氏に、WiMAXの動向や規制面での課題、LTEとの関係について話を聞いた。

WiMAX Forumプレジデント兼会長 Ron Resnik氏(米Intel)

--現在推進中の次世代技術「WiMAX Release 2」について教えてください。

Resnik氏 Rlease 2が土台としているIEEE 802.16mの仕様は、2010年中ごろに完成を見込んでいます。最初のトライアルは2010年末にスタートし、実装は翌年の2011年と予想しています。仕様は後方(Release 1)と前方の両方で互換性を確保し、投資を保護します。

仕様の互換性は重要な差別化です。LTEとWiMAXは共にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)ベースで、IPパケット技術インフラを土台としており、技術的に似ています。3Gオペレータは、LTEにアップグレードする際には機器などを買い換える必要がありますが、WiMAXでは容易なアップグレードとなります。

--Release 2では、競合(LTE)よりリードできると強調されていますね。

Resnik氏 WiMAX Forumが強調している点は、「WiMAXは現時点でモバイルインターネットを実現する技術」です。LTEなどのほかの技術は、完全なインフラが整うのに2、3年が必要と聞いています。(オペレータは)広帯域、ビデオ、オープンインターネットを必要とするサービスモデルが求められていますが、WiMAXを利用することでこれらを提供できます。日本でWiMAXを利用しているUQコミュニケーションズは、自宅で利用する(固定ブロードバンド)インターネットを持ち歩けるというビジネスモデルでユーザーの支持を得ています。

一方、日本とは異なり(固定)ブロードバンドが普及していない地域もあります。アフリカなど3Gなどの資産がないモバイルオペレータは、コスト効率よく迅速にブロードバンドを提供する技術としてWiMAXを選択しています。このようなニーズも強まる一方です。

Release 2は、このような2つの需要に応えるものです。2、3年後には投資が無駄になるというものではなく、将来にわたって投資保護が約束されている技術です。

このような点から、Release 2は非常にパワフルだと思っています。

--導入シナリオは?

Resnik氏 GSMはよく機能しており、音声向けの無線技術として、いまでもニーズがあります。WiMAXやLTEはデータ向けの技術です。(WiMAXは)GSMを置き換えるつもりはなく、GSM/WiMAX、あるいはGSM/3G/WiMAXという組み合わせもあります。GSM/3Gがあり、キャパシティを強化するなど、異なる周波数帯を利用するといった場合です。米国ではSprintの事例があります。このような柔軟性はWiMAXの強みです。

オペレータが直面している課題のひとつに、キャパシティと収益性のバランスがあります。データは音声の100倍以上のキャパシティを要求しますが、だからといってユーザーにデータ料金の100倍を課すわけにはいきません。さらには、「iPhone」のようなデータ用途に魅力的な端末が登場し、データの需要はこれまでを上回るペースで増えると予想されます。オペレータはWiMAXかLTEに移行しないと対応できなくなっています。オープンインターネットや動画といったサービスを提供するには、WiMAXかLTEでなければ無理、といっても過言ではありません。

Hewitt氏 WiMAX Forumではプロファイルを細かい段階で策定しています。これにより、WiMAXはブロードバンド途上国でも発展国でも使える技術となっています。

たとえばチリ、ブラジルなど南米では基本的なブロードバンドとして利用されており、マレーシアでは完全なモバイルブロードバンド技術として導入されています。このように、さまざまなビジネスモデルを可能にする非常に柔軟なモバイル技術です。