仮想化/サーバ統合 - Hyper-V 2.0で大刷新

続いて、「仮想化/サーバ統合」における機能強化である。

仮想化/サーバ統合に関しては、まず、同社の仮想化基盤「Windows Server 2008 Hyper-V」が2.0へとバージョンアップしている。Hyper-V 2.0では、前掲の表の通り、I/O処理の改善などにより、パフォーマンスが向上。高添氏によると、「他社と比べていただいても、遜色のないレベルになっている」という。

加えて、前述のCore ParkingやP-state対応なども有効に機能しており、消費電力が大幅に減少。このあたりは、「OSベンダーだからこそできた対応」(高添氏)と言い、「他の仮想化基盤プロダクトと比較すると、大きなアドバンテージがある」(高添氏)結果になっている。

また、Hyper-V 2.0では、仮想化基盤としての最も基本的な機能にあたる拡張性も大幅強化している。 サポートする論理プロセッサー数が24から64に増えたほか、利用可能な仮想マシン数が192から384へ、利用可能な仮想プロセッサー数が192から512へと増加している。

Hyper-V 2.0では、扱えるプロセッサーや仮想マシンの数が大幅に増加

また、Hyper-V 2.0では、新機能が数多く追加されている。こちらもすべてを取り上げることはできないので、以下では、Live Migrationと、パフォーマンス向上に寄与する機能を紹介しておこう。

Live Migration - 稼働中の仮想マシンを停めることなく移行

Live Migrationについては、Windows Server 2008 R2およびHyper-V 2.0の目玉機能として紹介されており、本誌も含めたさまざまな技術誌で何度も取り上げられているので、すでにご存じの方も多いと思うが、ここでは同技術について少し詳しく説明しておこう。

Live Migrationは、一言で説明すると、稼働中の仮想マシンを停止させることなく異なる物理マシン上へ移行させる機能である。VMware vShpereの「VMotion」に相当するもの、と言ったほうがわかりやすいだろうか。

仮想マシンの移行処理の流れを簡単に説明しておくと、Live Migrationでは、移行の指示を送ると、まず移設先の物理サーバに仮想マシンのコピーが作られる。具体的には、構成情報がコピーされ、メモリーデータがコピーされ、さらにコピー中に変更されたデータが反映される。そして、最後に「状態」が移されて、仮想マシンの移行完了となる。

ダウンタイムが発生するのは、ネットワークの切り替えなどが行われる最後の「状態」移動時のみで、時間にすると、状況にもよるが、おおむねPing1回分程度。これならば業務システムにおいても問題になることは少ないだろう。

Live Migrationでダウンタイムが発生するのは、「状態」が移され、ネットワークの切り替えが行われるときのみ

こうしたLive Migrationを可能にするためにMicrosoftでは、フェールオーバー・クラスターにおけるSAN(Storage Area Network)へのアクセス方式を追加している。それが、前掲の表に挙げた「クラスターの共有ボリューム(Cluster Shared Volumes: CSV)」と呼ばれるもので、以前は、1LUN(Logical Unit Number)にアクセスできるアクティブノードは1つと限られていたが、Hyper-V 2.0では、1LUNに複数のノードからアクセスできるようになった。

CSVにより、1LUNに複数のアクティブノードがアクセス可能

これにより、従来はノード数に応じてSANの論理ボリューム区切らなければならなかったが、今後はSANの論理ボリュームをわけることなく、1つのLUNを共有できるようになった。無駄な空きディスク容量が減らせるうえ、SAN設置時の敷居を下げ、設定の手間も省けることになり、大きなコスト削減につながるという。

なお、CSVに関しては、「米国のイベントにて、1LUNに対し16ノードで1000台の仮想マシンを稼働させた場面も紹介されており、拡張性や実用性についても問題ない」(高添氏)という。

また、ライブマイグレーションは、基本的にすべての物理サーバのCPUが同じものでなければならないが、「ハードウェアの進化の速度を考えると、サーバ増設が必要になったときに、数年前と同じCPUを用意するのは難しいケースもある」(高添氏)ことから、CPUのバージョンについては混在を許す設計になっている。この機能を利用する場合、全CPUが下位CPUのスペックに合わせるかたちで制御されることになる。

異なるバージョンのCPUをサポート

仮想環境の性能向上に向けて

Hyper-V 2.0では、上記ライブマイグレーションもさることながら、パフォーマンスの向上という点についても力を入れて開発が行われている。

最初に挙げられるのが、ネットワーク機能の強化だ。今回から、一部のNICに備わる「VMQ(Virtual Machine Queue)」や「TCPオフロード」、「ジャンボフレーム」などが利用できるようになった。特にVMQについては、仮想マシンごとにキューが設けられ、トラフィックが最適化されるというもので、その効果は仮想マシンの数が多くなるにつれて大きくなるだろう。

仮想環境におけるネットワーク機能も大幅強化

そして、もう1つ、仮想環境におけるパフォーマンス向上に大きく寄与しているのが、仮想ディスクにおける書き込み速度の向上である。

ディスクを仮想化する場合、仮想ディスクの容量を固定的に割り当てる「固定長VHD」と、必要に応じて柔軟に増加させることができる「可変長VHD」の2種類が存在するが、旧バージョンのWindows Server 2008では、可変長VHDに関して「劣化が大きかった」(高添氏)と言い、マイクロソフトでも本番環境では固定長VHDを勧めていた。

それに対し、Windows Server 2008 R2では、両VHDにおける書き込み速度を大幅に改善。固定長VHDはネイティブの書き込み処理に近づき、可変長VHDに関しては94%程度のパフォーマンスが確保できるようになった。仮想化をするのであれば、「もはやWindows Server 2008 R2を使わない手はない」(高添氏)といった状況だという。

ディスク仮想化もパフォーマンスを気にせず使えるようになった