続いてフィンFET(FinFET)に関する2件の講演を紹介した。フィンFETとは、チャネル領域が放熱フィンのように薄く垂直に立っており、そのフィンを登って降りるようにゲート電極を形成したトランジスタである。この構造だと、ゲート長を短くしても短チャネル効果が起きない。またフィンの両側にゲート電極があるのでオン電流が増える。このため、次世代のトランジスタ技術として開発が進められている。
最初の1件は、EUV(Extreme Ultra Violet)露光技術によるSRAMセルの試作結果である。IMECとASML、Applied Materials(AMAT)が共同で試作した(講演番号12.4)。EUV露光技術は、波長が13.5nmと極めて短い軟X線を光源とする次世代露光技術であり、現在の最先端量産用露光技術であるArF液浸露光をはるかにしのぐ微細加工を可能にする。
IMECらの研究グループは昨年のIEDMで、EUV露光技術を利用してSRAMセルを試作発表していた。この時のセル面積は0.186μm2である。今年のIEDMではさらに縮小した、わずか0.099μm2のSRAMセルを試作してみせた。
EUV露光技術を利用して加工したのは、コンタクト孔と第1層金属(M1)配線である。トランジスタはフィンFETで、こちらはArF液浸露光技術で加工した。
2件目は、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)化合物を材料としたフィンFETである。Purdue Universityが試作した(講演番号13.4)。InGaAsはSiをしのぐ高性能トランジスタを実現できる材料だが、きちんと動作するフィンFETを作ることが難しかった。Purdue Universityは損傷のきわめて少ないエッチング技術を開発してフィンFETのゲート加工に適用し、動作特性の良好なフィンFETを作製した。
続いて同じInGaAs材料で電流駆動能力が0.28mA/μm、伝達コンダクタンスが1350μS/μmと高いトランジスタを実現した講演を紹介した。IntelとIQEの共同研究成果である(講演番号13.1)。量子井戸構造と高誘電率絶縁(タンタル酸化シリコン(TaSiO))ゲート構造を駆使している。