今回、エントリー台数は72台で、そのうち実際には65台が出走。初日のトライアル走行(約140m)をクリアできた全34台だけが、2日目の本走行に進出できた。
本走行の出走順は、トライアル走行のタイムが良かった順番になる。速いチームが先に出るので、追い越しが起きにくい状況なわけだ。5分ごとに、1台ずつスタートとなる。
今年の一番手スタートは、筑波大学知能ロボット研究室TsukuRoboチームだったのだが、じつはこの大会には、一番手が完走できないというジンクス(?)がある。過去2回の大会において、どちらも予選トップだった北陽電機・産総研ジョイントチームは、100mも進むことができなかったのだ。
リタイアの原因ではなかったにしても、実際、一番手の環境は特に厳しい。本走行の開始時には、スタート地点は大群衆に囲まれてしまう。ロボットは、人や障害物を回避するためにセンサを搭載しているため、周りを囲まれると非常に困る。またセンサやアルゴリズムの種類によっては、自分の位置を見失うこともある。ある程度、観衆には協力をお願いしてはいるものの、なるべく「ありのままの環境」を謳う競技だけに、「ロボット側でなんとかしてくれ」としか対処しようがないのが実情だ。
今年の一番手だった筑波大学チームは、最初の右折はうまくいったものの、直後の植え込みに当たってしまい、わずか40mでリタイア。前日のトライアル走行ではあっさりクリアしていただけに、不本意な結果だろう。ただし、委員からは「混雑したスタートをうまく通り抜けたのは立派」との評価を受けた。
群衆の影響をモロに受けたのは、2番手だった防衛大学校情報工学科ロボット工学研究室チーム。ロボットの前進と連動して観衆も移動したため、自分が移動していないと錯覚してしまったようで、前進を続けてそのまま池へ一直線。停止ボタンを押して、25mでリタイアとなった。人混みの環境下でのアルゴリズムには、今後改善が必要だろう。
3番手出走の筑波大学知能ロボット研究室屋外組2009チームは、スタート地点から最も遠い620mあたりまで進んだが、そこで脱輪、モーターに負荷がかかって機体から煙が出てきたところで断念した。このロボットは、レーザーレンジファインダ(LRF)を使って木や壁を見て、自己位置を同定するシステムを使っていたが、少し誤差が出てしまったようだ。これ以外では非常に安定していただけに、残念。
そして今年の大会で最初の完走を果たしたのは、4番手の日立製作所 機械研究所 自律移動技術研究会チーム。こちらもLRFをメインセンサーに使っているタイプのロボットで、オーソドックスなスタイルだが、「しっかりしたハードウェア設計。デザインの完成度は高い」と、委員から高い評価を受けた。
同社はサービスロボット「EMIEW(エミュー)」を開発しているが、屋外環境での技術実験として、今回のつくばチャレンジに参加したそうだ。走行タイムは27分22秒で、これは今年の最速タイムとなった。
そのほか、富士ソフト/筑波大学MRIMプロジェクト(28分07秒)、東北大学田所研(37分35秒)、千葉工業大学 fuRo アウトドア部(32分44秒)、宇都宮大学 尾崎研究室B(51分07秒)までが完走。コースは違うものの、前回の完走がわずかに1台だったのに比べると、全体的にレベルが向上した結果と言えるだろう。