モバイルデバイスで営業の効率アップ
顧客管理の最たる活用例は営業活動だ。訪問前に顧客の情報を取得して、もっとも的確な営業活動を行う。こうなってくると、顧客データへのアクセスはPCのみならず、出先から携帯電話やスマートフォンを経由してできたほうがいい。米Salesforce.comは次のモバイル端末向けにアプリケーションを提供している。
- BlackBerry
- Windows Mobile
- iPhone
日本市場ではさらに次のキャリアの端末もサポートされている。
- au
- NTTドコモ
- ウィルコム
ソフトバンクが記載されていないが、これはSalesforce.comで提供されているWindows Mobile/iPhone向けのアプリケーションがそのまま利用できるためだ。実質的に日本市場の主要モバイルキャリアにはすべて対応していることになる。
セールスフォース・ドットコムのモバイルアプリの3つの特徴
セールスフォース・ドットコムの提供しているモバイルアプリケーションには同種のアプリケーションと比較して次の特徴がある。
特徴1: オフラインで動作、データを同期
セールスフォースのモバイルアプリはリリース当初からオフラインで動作するように設計されている。オンラインが前提となるWebアプリケーションとは設計思想が異なっている。ただし、リアルタイムにデータを閲覧できる機能もあるなど、双方の利点を取り込んだハイブリッド型になっている。操作が早く、通信環境に依存せずに作業ができる。
特徴2: きわめて高いカスタマイズ性
モバイルアプリケーションでも、同社が提供しているほかのオンラインサービスと同様に高いカスタマイズ機能を提供している。どのフィールドを見せるのか、モバイルにどういったデータセットを提供するのか、そのほか細かいセキュリティモデルも設定できる。多種多様な業界の顧客の要望に答えるには、こうした高い柔軟性が欠かせない。
特徴3: プラットフォームとしてのアプリ
顧客管理の機能のみに限定されることなく、提供されているソリューションを組み合わせて専用のアプリケーションにできる。専用のアプリケーションというよりも、専用のアプリケーションを作るためのプラットフォームとしての側面がある(ただし日本向けの携帯専用のアプリは除く)。
日本でもっとも使われている携帯はau
この手のモバイルアプリケーションでは端末としてスマートフォンが取り上げられることが多い。典型的にはBlackBerryであり、最近の注目はiPhoneに広がっている。その状況の中、意外に聞こえるかもしれないが、セールスフォース・ドットコムで把握している限り、もっとも同社のモバイルアプリケーションの利用例が多いのはau by KDDIの携帯だという。
端末の性能からいえばiPhoneやBlackBerryを使ったほうが便利だが、エンタープライズで大規模に採用するには通信コストがまだまだ高いという。法人契約ディスカウントが得られるauの携帯が、日本市場で導入するには現実的な路線であり、それがゆえにauの採用が多いという。セールスフォース・ドットコムの会社からもauからのアクセスが多いということだった。
内田氏が利用しているのはBlackBerry。スマートフォンのほうが使い勝手が良いのは事実だが、コストを考えると現状ではauが最も現実的な選択肢だという。ちなみに米国本社のBenioff CEOはiPhoneユーザだとか |
モバイルの需要は高まってくる - さまざまな選択肢を用意することが大切
「日本市場にコミットしたソリューションを提供していくのは米国本社の意志でもある」と内田氏。「モバイル市場は伸ばしていきたいので、今後も無償のものや個人ユーザ向けを含めて、さまざまなアプリケーションを提供していきたい」 |
セールスフォース・ドットコムが今後のモバイル市場をどう考えているのか、セールスエンジニアリング本部 シニアプリンシパルアーキテクト 内田仁史氏は、あくまでもまだモバイルからの利用は全体のソリューションからみた場合の補完的な意味合いが強いとしたうえで「今後、モバイルデバイスは確実に増えてくるだろうし、モバイル市場への刺激は続けていきたい。モバイルユーザ数も順調に伸びている。顧客に対してさまざまな選択肢を用意していくことが重要だと考える」と説明する。
米国のビジネスマンは自動車で移動することが多いが、日本の営業マンはほとんどが電車で移動する。このため、出先で利用する端末は軽量で持ち運びがしやすい携帯電話になる。さらに日本の携帯市場は世界市場と比べると特殊性がある。こうした状況に対応し、キャリアごとの専用アプリケーションも提供しているところにセールスフォース・ドットコムの日本市場へのコミットメントの高さがみられる。