HD、クラウド、セキュリティ、モバイルが今後の重点テーマ
Leighton氏は、今後同社が注力していくテーマとして、「HD」、「クラウド」、「セキュリティ」、「モバイル」の4つを挙げた。
500倍増のトラフィック増が見込まれる「HD」
インターネットにおけるビデオの歴史は、1999年に米国の下着メーカーであるVictoria's Secretがスーパーボウルを活用したビデオ広告を行ったことから始まり、それ以来スループットは右肩上がりで急成長し、昨年の米オバマ大統領の就任時には最高記録を達成したという。
現在、HDビデオが家庭に進出し始めている。同氏が現在のユーザー数、利用時間、速度から試算したところ、今日のスループットは大体2.4Tbpsだが、将来はその540倍の1,296Tbpsにまで増えるそうだ。
こうした状況に備え、同社は今年9月に独自のHDネットワークを構築したことを発表した。加えて、同社ではFlashやSilverlightといったストリーミング技術、iPhone上のHDビデオのストリーミングなど、さまざまな技術のサポートを進めている。
「当社のHDストリーミングは、"高品質"、"ビットレートの最適化"、"スイッチングの高速化"、リアルタイム性"を実現している」
インフラ、プラットフォーム、ソフトウェア、最適化の分野でクラウドを提供
同社はクラウドを構成する技術要素のうち、「IaaS(インフラとしてのサービス)」、「PaaS(アプリケーションプラットフォームとしてのサービス)」、「SaaS(ソフトウェアとしてのサービス)」、「最適化」を提供している。「IaaS、PaaS、SaaSに関する取り組みは、クラウドという名称がなかった8年前から行っている。そして、クラウドの最適化を行っているのは、当社だけだ」
また同氏は、「クラウドは確かに人件費やハードウェアなどのITに要するコストの削減に貢献するが、パフォーマンスとセキュリティという"コスト"を増やすことを忘れてはならない」と指摘する。
つまり、クラウドは利用の仕方によっては、パフォーマンスが劣化し、セキュリティが低下することになるというのだ。
同社ではこの2つの課題について対策を施している。パフォーマンスについては、同社は世界中に5万以上のサーバを配置して、顧客のできるだけ近くのサーバから配信が行われるようにしている。そのうえで、ルーティングの最適化を図っている。
「ルーティング上のサーバに障害が発生しても、すぐに異なるルーティングが設定される。また、当社独自のプロトコルを活用しているので、TCP/IPのように何度も応答確認を行うことはない。われわれは、物理的なインターネット上に独自の仮想的なインターネットを構築しているのだ」
リスクを発生した場所で即座にブロックできるセキュリティ技術
同社の「顧客のそばにサーバを配置し、複数のサーバによるリレーによるコンテンツ配信を行うという戦略は、クラウドに加えて、セキュリティの強化にも役立っている。
「当社のネットワークでは、リスクが発生した場所でブロックするため、ファイアウォールを越えて、リスクが侵入してくることはない。以前、韓国のボットネットから大規模な攻撃を受けた際も、通常の600倍ものトラフィックを受けたサーバが落ちなかった。また、ボットは韓国で食い止められ、米国には侵入させなかった」
ただ、サーバが分散しているとリスクも分散し、データセンターで一括してサーバを管理しているほうがリスクが分散しないようにも思われる。
「コンテンツ配信の場合、セキュリティは2通りある。1つはサーバのセキュリティだが、これはソフトウェアとハードウェアによって防御するものであり、サーバの分散化とは関係ない。もう1つはコンテンツのセキュリティだ。当社はこれまでインターネットが多くのリスクにさらされているなか、顧客に対して安全にコンテンツを配信するためのノウハウを蓄積した。データセンターの場合、数ヵ所すべてが落ちたら業務を継続できないことになる。よって、分散ネットワークのほうが安全だ」
モバイル向けコンテンツを高速化
同氏は、「今後モバイルのコンテンツ配信はますます増えていくだろう」と語る。ただし現在のインフラでは、モバイルデバイスに対する長距離のデータ送信において、パケットの損失が発生してデータの再送信が行われているという。
この問題に対し、同社では動的なサイトアクセラレータを用いて、モバイルデバイスに対するコンテンツの高速化を図っている。同社の調べでは、iPhoneに対するデータ送信において、同社の技術を用いると30秒の短縮が可能だそうだ。
現在、クラウドの推進に向けて、さまざまなベンダーが取り組んでいるが、独自技術を多く擁するアカマイがどのようにクラウドに関わっていくかは非常に興味深い。今や、われわれの生活にインターネットはなくてはならない存在だ。これからもインターネットが快適かつ安全に利用できるよう、同社にはがんばってもらいたい。