ヘルスケアでICTを活用、eカルテの普及を図るカナダ政府
インフラとしてのICTは、各国が活用について模索を続けている課題だ。パネルに出席したカナダのカナダ産業省周波数情報技術・通信担当次官補Helen McDonald氏は、ヘルスケアや行政サービスの改善について紹介した。
ヘルスケアのコストは各国共通の課題だが、カナダではICTを活用してヘルスケアシステムの効率化を改善させているという。システムだけでなく、遠隔診察、X線などのデジタルデータの共有、患者のモニタリングなどでも活用している、とMcDonald氏は紹介する。「1,000万平方キロメートルに3,200万人が散在するカナダでは(ICTは)大きなメリットを生む」とMcDonald氏。
現在進めているのが、患者の情報を電子的に記録/保存するeカルテだ。政府はeカルテに15億ドルを投資して、2010年までに国民の50%がアクセスできるようにするという。
McDonald氏はこのほかにも、2億2,500万ドルを投じるというブロードバンド普及計画、オンラインプライバシー規制などの取り組みも紹介した。そして、ICTの課題にとして、インターネット経由での文化コンテンツへのアクセス、技術の受け入れと利用の奨励、基本的なデジタル知識とスキル、などを挙げた。
ネット中立性を慎重に審議する米政府
米国大使、国務省国際通信情報政策担当コーディネータ、Philip Verveer氏は、米国の規制当局の取り組みを紹介した。
Verveer氏によると、「規制から見た課題」として、
- どうやってデジタル技術とブロードバンドのメリットを社会の全セグメントに拡大するか
- アクセスを提供する企業とコンテンツ/アプリケーションを提供する企業との間の問題
の2つが上がっているという。
1では現在、連邦通信委員会(FCC)がブロードバンドをどうやって全米に拡大するかについて詳細な調査を行っている。年明けに議会に提出する予定で、「私がこれまで見た限り、FCCがこれほど熱心に取り組んでいるのははじめてだ」とVerveer氏は述べ、Obama政権がブロードバンドの格差解消を重要課題としていることを示唆した。
2は、いわゆるネット中立性の問題となる。ネット中立性は、ネットワークを提供する事業者がコンテンツを選択したり優先順位を付けるべきではないという議論で、米Googleの「Google Voice」が「App Store」で提供されていないことを受け、このところ関心が高まっているトピックだ。
Verveer氏は、「ネット中立性の問題は企業間の垂直な関係だけではなく、消費者の権利、期待、社会福祉も関係している」として、「実用的な方法で解決する必要がある。ポリシーを策定するにあたり、供給の観点か、需要の観点かで異なる」として、慎重な姿勢を見せた。