「ロボットクロニクルゾーン」 - 昭和の人気者・相澤ロボットを展示
入場ゲートをくぐって右手に展開されていたのが、ロボットの今昔に触れてもらおうという「ロボットクロニクルゾーン」。経済産業省と社団法人日本機会工業連盟が主催する「今年のロボット大賞」の2008年受賞ロボットのパネル展示と、大阪万博にも出展された「相澤ロボット」の実演展示が行われていた。
ここで「相澤ロボット」と呼ばれているのは、昭和の"ロボット博士"として活躍した故・相澤次郎氏が、自ら設立した「財団法人 日本児童文化研究所」で生み出した大型ロボット兄弟のこと。昭和30年代から60年代に至るまで全国のイベントで活躍した後、北海道夕張市の「ゆうばりロボット大科学館」で展示されていたが、2008年の同館解体により財団のもとへ"里帰り"した。すでに何度かお伝えしたが、2009年から財団と神奈川工科大学、ボランティアの有志メンバーによる修復プロジェクトが進められており、今回はプロジェクト開始後初のお披露目ということで、兄弟たちの中から4"人"が出展された。
誰もがイメージするロボットのアーキタイプ(原型)とも言うべき、まるい目の愛らしい顔を持った親しみやすいデザインは、昭和を懐かしむお父さんお母さんだけでなく、今の子ども達の心もつかんでいたようだ。
1959年生まれのロボット兄弟の長男「ガイドロボット 一郎くん」は、人が近づくとセンサが感知し、首を動かし目を光らせながらしゃべり出す仕掛け。音声が夕張時代に入れ替えられたと思われる「ウェルカムロボット 信介くん」のままだったのがちょっと残念だが、50歳という年齢(?)を感じさせない健在ぶりを見せていた。
「スタンプロボット テッちゃん」は、「一郎くん」と同様の仕掛けに加えて、空気の流れの変化を感知するセンサが内蔵されており、紙を置いてスタンプ台の穴がふさがると自動的にスタンプを押してくれる。子ども達と目線の合うサイズ、単純ながらインタラクティブな動作で、一番の人気を集めていたようだ。ちなみにスタンプは当初からシヤチハタ製のインク内蔵型が使用されており、今回は往年の図案を復刻する予定だったが残念ながら諸事情から間に合わず、「ゆうばりロボット大科学館」の図案が押されていた。
1970年の大阪万博フジパンロボット館に一対で出展された「カメラマンロボット 太郎くん」と「モデルロボット 五郎くん」は、当時の記念撮影を再現する形で向かい合わせに展示されていた。来場者の中には、万博で写真を撮ってもらった想い出を語る人もいたとか。
今回の出展にあたっての修復作業は、多くの時間がこの「太郎くん」に費やされたようだ。作業の取材時には大部分が焼きついてしまっていた腹部電飾パネルの電球も、秋葉原の部品店などで探して相当品を調達したそうで、かなり光るようになっていた。万博当時のようなロボット本体の撮影動作までは再現されなかったが、ライトがビカビカに光った姿はいかにも"よみがえった!"という感を醸し出していた。
「太郎くん」が当時手に持っていたポラロイドカメラのボックスは失われており、夕張ではCCDカメラを持たされていたが、今回の出展ではインスタントカメラでの撮影にこだわって、生産中止のポラロイドフィルムの代わりに、富士フイルムの「チェキ」で撮影できるボックスが神奈川工科大生の手で製作され取り付けられた。
会場では、他のロボット達の修復費用にもあてたいと来場者に呼びかけて1枚500円で"チェキ"による記念撮影を行っていたが、修復プロジェクトの中心メンバーであるマノイ企画の岡本氏によれば、2日間で6万7,000円の売上となったそうだ。ということは撮影枚数は134枚。半年の会期中に6万5,000枚を撮影したという万博当時の記録にはさすがに及ばないが、悪くない数という気もする。今後も各地の展覧会やイベントに出展して同様の撮影を行っていく予定ということなので、ポラロイドのインスタントフィルムも来年には復活するようだし、いずれは万博当時のカメラボックスと動作が完全再現されることに期待したい。