世界のADやエディターが語る雑誌メディアの魅力

2日目は場所を九段会館に移し「International Magazine Conference」が行われた。

初日、2日目ともに多くの来場者が集まり、九段会館もほぼ満席の状態

トップバッターはフランスのファッションカルチャー誌『Purple Fashion』のアートディレクターを13年間務めたChristophe Brunnquell氏。

グランジ系インディペンデント誌の先駆けとして、実験的な試みを重ねて来た雑誌『Purple』。氏は雑誌作りで大切なことを「乗り物で喩えるなら、オートマティックで運転するのではなく、マニュアルで操作すること」とフランス人らしい比喩表現を用いて語る。なぜ、雑誌にアートディレクターが必要か? との問いに対しては「ADはアーティストたちに活力を与え、彼らに対して新たな意味や価値を付加していく役割」と答え、「編集長が構成、写真、執筆などすべてを自らの手でこなすのはいい傾向だ」と、現在、複数のクリエイティブ・マガジンが行う制作方法に触れ、雑誌の新時代を予感させた。

現在はメジャーファッション誌のADも務めるChristophe Brunnquell氏


そして、ドイツからはベルリンを代表するインターナショナル・マガジン『032c』の発行人兼編集長のJorg Koch氏が来日。

ファッションから政治経済に至るまで現代の諸問題を独自の視点で鋭く切り込む同誌。雑誌名の由来はPantoneのカラーコード「032c」より引用されており、ジャーナリズムやインターネットへのアンチテーゼを込めて2000年に創刊された。「まずは読者に読んでもらうことという事実を真剣に受け止め、クライアントをはじめ、さまざまな人々に対して確信を持ってNOと言う態度を取った。それはビジネスをする上では愚かな行為だったが、逆に、雑誌の信頼や価値を勝ち取ることには成功した」と創刊当初についてKoch氏は話す。

デザインに関しては「マーケティング的な立場も含めて雑誌の研究活動を重ねた結果、アングラな雑誌よりもメジャーな雑誌の方が知性を感じやすいといった結果が導き出せたことは、興味深くおもしろかった」と語ったのが印象的だった。同誌のエディトリアルデザインがシンプルに構成されているのも頷ける。「自由、冒険、セクシー、危険というキーワードをどう加えるか」を課題とし、「野蛮なエレガンス」を追求する『032c』から今後も目が離せない。

ベルリンのみならず各都市で人気の雑誌『032c』発行人兼編集長Jorg Koch氏

そのほかにもカルチャー誌『CUT』のアートディレクター・中島英樹氏、メンズ・スタイル誌『FANTASTICMAN』のGert Jonkers、Jop van Bennekomの両氏、NYを拠点にアート・マガジン『NEWWORK MAGAZINE』を手がけるStudio Newworkの3名、シンガポールの『WERK』クリエイティブ・ディレクターのTheseus Chan氏、イギリスはロンドンより『Intersection』アートディレクターのYorgo Tloupas氏がプレゼンテーションを行った。

アムステルダムの『FANTASTICMAN』からGert Jonkers、Jop van Bennekomの両氏

『NEWWORK』を制作するSTUDIO NEWWORKは、この時代における雑誌メディアの意義を解説

日本でも発行されている『intersection』のAD、Yorgo Tloupas氏

日本を代表して中島英樹氏が登壇

各プレゼン後には質疑応答の時間が設けられ、参加者からは活発な質問が飛び交い議論のような場面に至るケースも見受けられた。日本と海外という枠を飛び越え、アーティストから写真家、アートディレクターなど、さまざまなクリエイティブの刺激に溢れた有意義なイベント「Tokyo Graphic Passport」。今後の展開に期待が膨らむ。