高くて遅いブロードバンドの改善に本気で乗り出す
オーストラリアからは、ブロードバンド、通信、デジタルエコノミー大臣 Stephen Conroy氏が登場し、ブロードバンド普及促進計画、それにテレコム業界の改革案を紹介した。
ブロードバンド促進は、政府が4月9日に発表した新しい計画だ。全国を網羅するブロードバンドネットワークを構築するもので、「90%でFTTHを提供し、残りの10%は最新の無線や衛星技術を使う」とConroy氏。FTTHは最低でも100Mbps、無線と衛星は最低でも12Mbpsを実現する目標という。政府では、この全国ブロードバンドの構築にかかる総コストを430億ドルと試算しており、短期的には新規雇用を促進すると見る。「より重要なのは、ICTがもたらす変革による生産性、教育、ヘルスケアの改善、グリッドなどスマートインフライニシアティブなどへの好影響」(Conroy氏)。タスマニアなどバックホールがないところの問題解消にも乗り出したという。
テレコム業界の改革は、政府が3週間前に発表したものだ。オーストラリアでは、1社(Telstra)が銅線ネットワークを所有し、無線でも最大のシェアを誇る上、ケーブル企業の主要株主でもある。「テレコム業界の90%の収益が1社に集中している。この結果、オーストラリアのブロードバンドは世界的に見て遅く、高価、低品質だ」(Conroy氏)。
そこで政府は、先のブロードバンド計画と同時にテレコム業界改革を進めることになったという。政府は先日、Telstraに対し、自主的に小売(Retail)と卸売(Wholesale)に機能分割するよう求めた。もし分割案を受け入れなければ、デジタルTV移行後に空く次世代の周波数帯へのアクセスを限定的にするという条件付きだ。「狙いは、ブロードバンド網が卸売のみのオープンなネットワークとして規制されること」とConroy氏。
この動きに対し、国内外からさまざまな評価があったが、「業界を改革し、高品質なブロードバンドを提供することに全力を注ぐ」とConroy氏は述べる。「テレコム業界の改革は、各国でアプローチが異なる。オーストラリアでは急進的なステップが必要と判断した」と述べた。
"アフリカには豊富な人的資源がある"
途上国の代表はエジプトの通信情報技術大臣Tarek Kamel氏だ。アフリカのテレコム業界は発展が目覚しいが、エジプトはその最前線に立っている。
Kamel氏はまず、「途上国の多くがいまでも2桁成長を続けている。ICT業界は経済成長に貢献している」と述べる。さらには、「アフリカなど途上国は、現在の世界経済危機の回復に大きく貢献できる」と続ける。
「世界経済の3分の2がサービスに依存している」とKamel氏。「サービス業界は市場と人的資源に依存するが、エジプトをはじめアフリカには豊富な人的資源がある。これをオープンにしていく」とオフショアに力を入れる計画を示した。「成長国はコストを削減でき、開発国は雇用を促進できる」(Kamel氏)。
「オフショアやアウトソーシングに否定的な向きもあるが、これは現実だ。労働市場がシフトするのは当然の流れだ。これを資本化して新しい経済システムを作ろう」とKamel氏は呼びかける。対象としては、モバイルコンテンツ開発分野に注目しているという。