患者情報の共有に活用 - プラタナス
発表会では、在宅医療における活用事例も紹介された。
医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニックの遠矢純一郎氏によると、限られた人数の医師や看護士、ホームヘルパーらが各家庭を回り、診察や処置を行う在宅医療では、何よりも情報共有が大切だという。
従来はノートPCを活用してそれを行っていたが、PCでは起動に時間がかかるうえ、移動中の利用という点では難があった。そうした課題を解決する端末として、プラタナスが注目したのがiPhoneだ。
プラタナスの事例の特長は、独自のアプリケーションを開発するのではなく、Web上の既存サービスを活用して、情報共有や業務効率化を実現している点にある。
まず、患者の病歴や処方内容をまとめたドキュメントをフォルダ同期サービス「Dropbox」で共有。必要に応じて、iPhoneで撮影した写真や動画も保存し、文字では伝えづらい情報もシュアしている。
また、メールによるFAX送受信サービス「InterFAX」や、iPhoneの定型文入力機能、ボイスメールのディクテーションサービスを活用して、診療録や紹介状の作成/送付業務を効率化しているほか、Googleカレンダーや住所録転送機能を利用し、スケジュール、住所録、ToDoリストの共有も行っている。
さらに、iPhoneを二輪車に取り付けて患者宅への道案内に利用したり、医療用アプリケーションをインストールして治療薬処方時などに参照したり、といったかたちでも活用。今や手放せないツールになっているという。
そして、こうした利便性に加えて、iPhone採用の大きな理由として挙げられたのが、一般的なモバイル端末よりも強固なセキュリティ機能だ。
上記のような使い方をしているプラタナスのiPhone端末は、患者の個人情報が大量に詰め込まれているため、万一紛失という事態が起きた際の影響の大きさは計り知れないものがある。しかし、iPhoneでは、遠隔地からのデータ消去が行えるうえ、GPS機能を活用してiPhoneの現在地を検出することもできる。こうした機能により、有事の対応がとれるからこそ、導入に踏み切れたという。
また、プラタナスでは、解除パスワードを10回間違えるとデータが初期化される設定にしているほか、DropboxやGoogleカレンダーには個別のパスワード保護をかけて2重のセキュリティをかけるなどの対応を行い、さらなるセキュリティ強化に努めている。