ここ数年、総合ITベンダーによる大手BI専業ベンダーの買収が相次ぎ、今や、独立系BIベンダーは数少なくなってしまった。IBMも2007年にCognosを、また、2009年にはSPSSを買収し、BI製品の拡充に力を入れている。本誌でもお伝えしたが、日本アイ・ビー・エムは9月30日、DWHアプライアンスの出荷を開始した。
買収後の統合の成果が出始めたこともあり、2009年に入って各社の活発な動きが目立っている。同時に、企業側でもBIの有効性に注目し始めており、BI導入の機運が高まってきていると言える。
そうしたなか、IBMがどのような戦略の下、競合がひしめくBI市場で戦っていくのか? 今回、米IBM ソフトウェアグループ バイス・プレシデント Development, Distributed Data Servers and Data Warehousingを務めるSal Vella氏に、同社のBIへの取り組みについて話を聞いた。
--IBMのBIに対する戦略を聞かせてほしい--
Vella氏: 当社にとって、BIは優先度が高いビジネスの1つである。ソフトウェアのインフォメーションマネジメントシステム分野で見ると、買収に100億円を費やしている。CognosやSPSSの買収を通じて、当社のデータベースであるDB2をベースに、BIのためのアーキテクチャを構築することができた。
当社のBIの技術のポイントは3層のアーキテクチャにある。1番下がDB2に格納されている「データ」層で、真ん中の層が名寄せによって得られる「Single version of truth(信頼できる情報)」層で、1番上がCognos製品によって得られる「分析された情報」層である。
今年4月、 BI関連の組織として、Mグローバル・ビジネス・サービス部門にビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーションを構築した。サービス部門の新設は15年ぶりのことであり、このことからも当社がBIを重要なビジネスとして位置づけていることがおわかりいただけるであろう。
--これまで専業ベンダーがシェアを占めてきたBI市場に、ここ数年、IBMのほかにオラクルやマイクロソフトといった総合ITベンダーの参入が続いているが、どう見ているか?--
Vella氏: 今のところBI市場はオープンと言える。当社はBI製品のスタックを最適化しているが、他社と協業しないわけではない。顧客が他社のBIツールを使っている場合は、当社の製品と共存させることができる。既存のスタックに含まれている製品を除外しようという戦略はまったくない。例えば、SAPも素晴らしいパートナーである。
そもそも、スタックは市場、顧客のニーズによって決まるものだ。顧客はBI製品のインストールと導入を極力シンプルにしたいと考えているわけで、当社はその部分にフォーカスして製品を提供している。これは、他のベンダーも同じだろう。
スタックを比較した場合、当社の他社に対するアドバンテージは、ハードウェア・ソフトウェア・コンサルティングを包括的に提供できる点だ。分析機能まで搭載したアプライアンスを提供しているのは、当社だけである。つまり、技術的に他社よりも一歩先を行っているというわけだ。