サーバ単体ではなくデータセンター全体で考える
日本SGIが提供するデータセンターソリューションとしては前述のとおり、3つの製品ラインナップがあるが、これらを活用することで、「サーバそのものだけではなく、運用の仕組みやデータセンターとサーバの関係などの見直しといった工夫ができ、TCOの削減につなげることができる」(同社 データセンタービジネス担当部長 増月孝信氏)とする。
同社では各製品に対しBTOに対応するとしており、「従来は、サーバベンダが用意したモデルの中からユーザが理想に近いものを選ぶという方式であり、BTOでの対応はかなりの挑戦。しかし、これでユーザが使うサーバの仕様をユーザ自身が決めることができるようになる」(同)としており、日本SGIがその要求に対する手伝いをする役割を担うとする。
CloudRackは新生SGIとなって初めて製品化されたサーバであるが、エントリークラス向けの19インチラック対応の「CloudRack X2」と24インチラック採用の「CloudRack C2」の2シリーズがラインナップされる。X2が最大126コア搭載可能であり、C2が最大912コアの搭載が可能だ。また、X2では、データセンター向けのみならず、HPCやグラフィックスにも対応するモデルを提供していくとしている。
CloudRackは、冷却ファンと電源をシャシーに搭載しないことで、動作条件を従来の18~20℃程度から40℃まで引き上げることに成功している。また、冷却ファンは、2000rpmの14cmファンをラック後部に設置。冗長性も持たせているため、負荷に応じて自動的にファンの速度をコントロールできるほか、1つが止まっても、その他のファンの回転数を増やすなどで応急処置的に対応が可能となっている。これにより、冷却ファンの全サーバ消費電力に占める割合を従来の25%程度から8%程度へと引き下げることが可能になるという。
また、独自の電源技術「Power XE」を採用することで電源変換効率の向上も実現している。通常、サーバへの電力供給は、200V3層の電流を流したとしても、常に一定の電力波形を維持し続けるのは難しく、高低差が生じてしまい、そこにエネルギーのロスが発生することとなる。「同技術では、そのロスをなくすため、一旦、電源をためるプールを作り、そこから各サーバに電力を供給することで、ロス電力を削減することに成功した」(同)としており、これにより95%以上の精度を達成したとするほか、直流(DC)12Vを用いた配電も可能であり配電効率99%を実現しているとする。
冷却ファンと電源をラック側に載せているため、サーバトレイのレイアウトはかなりシンプルなものとなっており、これがBTOでの自由なパーツ選択を可能としている。そのため、Xeon 5500番台やOpteron、Phenom X4といった構成のほか、6サーバを1Uのトレイ内に構築することも可能で、「仮想化といえばソフトウェアのイメージだが、物理的に仮想化を構築するようなことも可能となる」(同)と説明する。また、ユーザ側から搭載したいと提案されたパーツの搭載もPCI Expressのポートなどの物理的な要件ならびに電源容量の問題がなければ対応可能とのこと。
さらに、電源と冷却ファンが別の場所に用意されているため、トレイ側の振動はHDDのみとなる。これもSSDに換装すれば振動源がなくなるため、「メカニカルな部分がなくなるため、故障頻度が低減し、サーバの信頼性の向上や寿命の延命につながる」(同)とする。
DCソリューション対応サーバとコンテナデータセンター
一方のFoundation Rackは高密度化を実現した省エネ型サーバ。奥行き半分のサーバデザインを採用することにより、通常の2倍の密度(ラックあたり1U×最大88台)を実現する。Cloud Rackの前世代、つまり第1世代のデータセンター向け製品だが、「残した理由は、こちらの方が拡張性が高い。拡張性を要求するユーザーは少なからず居るため、そうしたユーザーにはこちらを提案する」(同)とする。
このFoundation Rackは、オプションとしてDC電源を採用することが可能な「ダイレクトDCソリューション」を用意。これにより、AC(交流)/DCの変換の必要がなくなるため、変換ロスを減らすことが可能となり、通常のAC方式と比較して最大30%、MTBF(平均故障間隔値)は同約10倍になるとする。
そして、コンテナ型データセンター「ICE Cube」であるが、基本的にはRackableがSC08などでも展示していたものと同じ。考え方としては、「ラック単位での増設を行っていると、急速なビジネスの拡大に追いつかない場合がある。そうした場合、データセンターを1から建設しても、完成まではそうとうな時間がかかることとなる」(同)といった問題に対し、データセンターそのものを提供しようというもの。最短90日でデザインから製作、導入が可能であり、コンテナのため移動も可能なほか、補助電源による独立状態での稼働も可能という。
なお、これらの製品は、インターネットデータセンター事業者やクラウドサービス事業者を中心に、企業内のプライベートクラウドなども含めた分野をターゲットとしており、「自社でソリューションを作る企業もいるが、日本SGIでもそうした付加価値ソリューションを含めて提供し、導入から運用支援までサポートすることで、初年度パイロット導入を中心に8億円、3年間で40億円の売り上げを目指す」(同社 営業統括副本部長 酒井宏幸氏)としている。