新生した米国SGIのデータセンター向けサーバ
日本SGIは9月16日、国内の次世代データセンター市場に向けて、省電力型サーバ製品「SGI CloudRack」ファミリおよび「SGI Foundation Rack」、コンテナ型モジュラデータセンター「SGI ICE Cube」の販売を開始したことを発表した。
同市場への参入について、同社代表取締役社長兼CEOの佐藤年成氏は、「何故我々がデータセンター市場へ参入するに至ったのか。それは米国SGI(Silicon Graphics)の破綻によるところが大きい」と説明する。米国SGIは既報のとおり、2009年4月1日に連邦破産法第11章(Chapter 11)を申請、それに併せてRackable SystemsがSGIを2,500万ドルで買収しており、同5月11日にすべての手続きが完了し、新会社の社名を「Silicon Graphics International」とし、「SGI」ブランドを構築し、事業の展開を進めている。
「何が変わったかと言えば、SGIの得意分野にRackableの得意分野が加わり、HPCからデータセンター向けまで幅広いラインナップが構築されたこと。これまで日本SGIはHPC、Visualization、Media&Archiveの3本の柱でビジネスを行ってきたが、これに新生SGIが製品化したCloudRackを追加、HPC分野で培ったノウハウをデータセンター分野に組み入れることで、第4の柱として推進していく」(同)という。今回提供を開始した製品のキーワードは「エコロジー」であり、「新生SGIが掲げる全体的なキーワードが"エコロジー"であり、グリーンITを標榜することで、SGI全体でエコロジカルにいきたいと考えている」(同)とする。
何をもって"エコロジー"とするのか
では、サーバの何をもってエコロジーをうたうのか。同社はサーバビジネスを取り巻く環境を、「次世代のデータセンターでは、とにかく消費電力を抑えることが重要課題となっている。これは、都市型データセンターの場合、場所が限られており、自治体によっては使用電力の制限を設けようという動きもある。また、データセンターそのものの黒字化を実現するためにも、コスト低減に向けた厳しい要求が突きつけられている」(日本SGI マーケティング本部 本部長 渡辺健城氏)とし、低電力化を実現したサーバの提供が必要とするほか、外資系企業の場合、海外のデータセンターを経由させつつ、日本でのサービス提供を図ろうという動きも出ており、そうした企業との競争力の確保も問題となる。
「データセンターやクラウドといったビジネスは、薄利ながらもエコロジーを実現しなくてはならないという命題を突きつけられており、特に電気料金の低減とCO2の低減は先述のデータセンターの黒字化要求と相まって相当なものとなっている」(同)とする。こうした課題をまとめると、"省電力への対応"、"省スペース化への対応"、"低運用コストの実現"、という3つが導き出され、これらの解決策として同社が考えたのが、"ECOサーバ""動作条件""BTO""柔軟な保守"の4つの方策であるという。
そもそも従来型データセンターは、処理能力を高めるため、高性能で高消費電力のサーバを導入していた。このため、発熱量が高まり、冷やすためには強力なクーラーが必要となり、その分、エネルギーを消費していた。これに対し、同社の考え方では、「同じ性能なら熱くないサーバに変えて、動作条件を緩和することで、できる限り自然の風などでクーリングする」(同)ことで、電源使用効率(PUE)を高めようというもの。
同社の試算では、ECOサーバへの転換と、動作条件を外気温40℃まで緩和することで、必要電力料金は従来型のクラウドサービス・センターで年11万1,600円かかっていたものが、45.5%改善となる6万760円になるという。これを3,000台設置したクラウドサービスセンターに適用し、3年間の運用を行う場合では、従来型で10億円かかっていたものが、5.5億円まで下げることができるようになるとしている。