ネットワークの一部が故障しても自動的に切り替える

さらにネットワークの通信網をつなぎ合わせる技術では、アベイラビリティ(ユーザーが使える期間や時間)と信頼性がカギとなり、どのような状態でも遅延のない状態を保ちたい。このためにルータのサプライヤと協力し、ネットワークをもっとアダプティブ(適応型)に対応できるようにする研究を行っている。例えば数万もの接続リンクがあるネットワークでもし一部のリンクが壊れたら、ネットワークの接続ルートを即座に変えて、1秒以内に使える状態に戻し、しかも40Gbpsをキープすることが重要だ、と同氏は語る。同社が開発中のこのIRSCP(intelligent Routing Service Control Point)は、クラウドコンピューティングサービスにも欠かせない。

自動的にネットワークの接続を切り替えられるIRSCPシステム

加えて、あらゆるコンテンツをスムーズに配信できる技術も重要になってきた。ビデオやデータ、あるいはアップグレードすべきソフトウェアファイル、WebページやライブWebキャスティングなどをWAN(広域ネットワーク)ベースで配信する。このための技術として、1つは世界中26カ所のホスティングセンターを利用する。このセンターでは大きな中央コンピュータを持ち、情報を処理するだけではなくユーティリティやストレージも備えている。さらに、いろいろなタイプのメディアをデザインする先端ソフトウェアサービスを提供する。この中央コンピュータが世界中でつながっており、そのネットワーク内でディスクドライブをプレビューし、AT&T独自の設計でメディアの配信をマルチキャストで行えるようになっている。

3つ目の技術は、ラストマイル技術とも言われるエッジネットワークで重要になる。ここでは銅線や光ファイバ、Wi-Fi、データと音声を含む移動無線技術などどんなネットワークでもベストの選択を結びつける。顧客の近くにネットワークを持ち、そのそばにコンテンツサーバを置き、コンテンツをキャッシングすることで効率よくコンテンツ配信を行うことができる。

例えば、2008年に米国大統領となったオバマ氏の就任式の時にインターネット上で膨大なビデオトラフィックがあったが、単一のユニキャスト配信だと100数Gbpsものバンド幅が必要となる。「われわれのマルチキャスト技術だと加入者をもっと増やしても対応できる。この結果、ネットワークのコストは上がらず、品質は高まるというメリットがある」とCambron氏は言う。

AT&Tはネットワークをこれからも拡張し続けるため、ユーザがネットワークに接続できないようなことがないようなアプリケーションを開発しなければならない。テレビやパソコン、携帯電話、スマートフォンなどさまざまなインターネット機器が接続されるようになるため、それらの機器にもIPアドレスを割りつけられるようにIPv6に対応できるようにする。