NVIDIAのIONの構成
NVIDIAのIONチップはすでにネットブックなどにも組み込まれて出荷されているノースブリッジとグラフィックス、ビデオ機能、DDR2/3メモり、PCI Express、USBインタフェースなどを持つチップである。
Intelのチップセットが35mm角であるのに対してIONは27mm角と小さいボードスペースで済み、消費電力も小さい。さらに、グラフィックスに関しては1.1GHzクロックで動作する16個のストリーミングプロセサを持つGeForce GPUを内蔵しており性能が高く、かつ、GPUコンピューティングのCUDAも動作させられるというのが売りである。
性能的には、3DMark06ベンチマークの実行では、IONに1GBのDDR2-533のDIMMを1枚接続したシステムではスコアは1118であるが、Intelの945Gの場合は同じDIMM接続で129である。まあ、これはGPUの3Dグラフィックス性能の差であり945Gと比較するのは酷な感じであるが、CPUの処理であるPCmark 2005の場合でも945Gのスコアが1694であるのに対して、IONは2004と高いスコアを実現している。
TIのOMAP4430の構成
普通の人にはなじみは薄いが、Texas Instruments(TI)の「OMAP(Open Multimedia Application Platform)」は携帯電話のプロセサとしては高いシェアを誇っており、開けて見たことは無いが、筆者の携帯にも使われているのではないかと思う。
TIの「OMAP4430」は45nm LPプロセスで作られ、2個のARM Cortex A9プロセサと携帯電話で必要とされるキーパッド、ディスプレイ、マイク、スピーカ、カメラ、USB、SIMカードやSDカードなどのインタフェースと、無線系モジュールとのインタフェース回路を集積したチップである。これらを全部まとめて、待機時の消費電力は100μW、フル動作時の消費電力は600mWである。
最近では携帯電話で実行されるブラウザなどの高度化による性能の向上要求だけでなく、ワンセグ視聴のためのビデオ処理や、ゲームの3D化に伴う3Dグラフィックス機能のサポートなどが要求されている。このため、2個のARMプロセサは1MBの2次キャッシュを内蔵し、クロックは1GHz超となっている。そして、これらのメインプロセサからリアルタイム処理をオフロードするため200MHzクロックのARM Cortex M3プロセサを持っており、さらに、アナログ信号処理用のDSPを搭載する。ということで全体では4コアのSoCである。
そして、これらの4個のプロセサとビデオなどのアクセラレータ、各種I/Oインタフェースモジュールなどを高速バスで接続した構成となっている。
その意味ではOMAP4430は携帯電話への組み込みを追求した専用のチップであり、IntelのMoorestown系が進化したとしても、この分野で必要とされる機能、要求される消費電力、コストなどでOMAPに追いつくのは容易ではないと思われる。Intelは豊富に存在するx86バイナリが動く点をアピールしているが、ARM系も従来からの開発資産に加えて、最近ではGoogleのAndroidなど強力な助っ人が加わっており、携帯からMIDレンジのプラットフォームがどうなっていくのかは目が話せない分野である。