一時期は「IT業界お得意のバズワードで終わるのではないか?」と危惧されていたクラウドだが、今年に入り、さまざまなベンダーが製品・サービスの提供を開始し、市場は急成長している。IBMはそうしたクラウド市場を牽引するベンダーの1つである。同社は今年に入ってからクラウド関連の製品やサービスを次々と発表しており、その動向を知ることはクラウドを検討・導入する際に一助となるだろう。ここでは、同社が今年発表したクラウド製品とサービスのポイントを時系列で紹介する。
【2月】専用施設とサービスマネジメントの観点による支援サービスを発表
2月に幕張事業所内に開設された「IBM Computing on Demandセンター」は、顧客が必要なときに必要なだけハードウェアリソースをネットワーク経由で利用することを可能にする。同センターは以下のようなインフラから構成される。
- コンピューティング能力
IBM BladeCenter、IBM System x、IBM System p - ストレージ
ファイバチャネル、SCSI、SAN、DAS - 管理ソフトウェア
IBM Cluster System Management for Linux on Multiplatforms、IBM Director(xSeriesサーバ管理用)、IBM General Parallel File System on Multiplatforms(オプション)
同センターを用いて提供されるサービス「IBM Computing on Demand」の最低使用料金は、クアッドコアCPU2個搭載のサーバを1週間利用する場合で5万400円(税別)で、1CPU1時間当たりで換算すると150円になる。同サービスを利用する際、ハードウェアを専有するか、共有するかは選択することが可能。
また、「IBM Service Management Center for Cloud Computing」は、クラウド・コンピューティング環境の構築と運用をサービス・マネージメントの観点から支援する。具体的には、顧客の要求に応じて、クラウドサービスを提供・管理できる製品「Tivoli Service Automation Manager V7.1」とクラウド環境の構成・導入を自動実行できる製品「Tivoli Provisioning Manager V7.1」を中心としたソフトウェア製品の提供と導入支援を行う。価格は1サーバ当たり39万1,900円から。
【3月】エンタープライズ・プライベート・クラウド向けの3サービスを発表
3月には、企業グループ内のプライベートなネットワークにおいて、仮想化やプロビジョニングといったクラウド・コンピューティング技術を使いながらITリソースを柔軟に組み合わせ、ユーザーの求めるサービスを迅速かつ自動的に提供できる「エンタープライズ・プライベート・クラウド」を構築するためのサービスが3種発表された。
クラウド・ビジネス・コンサルティング・サービス
クラウド・ビジネス・コンサルティング・サービスは、その名の通り、エンタープライズ・プライベート・クラウドをビジネスで有効に活用するための戦略策定や見積りを行うコンサルティング・サービスである。クラウドの活用が有効な領域を見極めたり、導入効果を概算したり、実現に向けたロードマップを策定したり、といった作業を行う。
クラウド・テクノロジー・コンサルティング・サービス
クラウド・テクノロジー・コンサルティング・サービスは、エンタープライズ・プライベート・クラウドの実現に向けた準備を技術面から支援するコンサルティング・サービスで、「IBM ITサービス・レファレンス・モデル」を活用しながら標準コンポーネントのリファクタリングを行い、アーキテクチャ策定やITサービスカタログの設計などを進めていく。
エンタープライズ・プライベート・クラウド設計/構築サービス
エンタープライズ・プライベート・クラウド設計/構築サービスは設計・構築を担うサポート・サービス。ITサービスをメニュー化したサービス・カタログを設計し、クラウド・コンピューティング基盤上でサービスを実行するためのテンプレートやユーザー・インタフェースを設計開発し、ITリソースの仮想化・プロビジョニング・ネットワーク・セキュリティなど、エンタープライズ・プライベート・クラウド環境に必要なIT基盤の設計・構築を支援する。
作業期間の概算および参考価格は、クラウド・ビジネス・コンサルティング・サービスが3ヵ月で2,500万円から、クラウド・テクノロジー・コンサルティング・サービスにおけるロードマップ策定が1.5ヵ月で800万円から、エンタープライズ・プライベート・クラウド設計/構築サービスが4ヵ月で3,000万円から。